お正月企画 | ナノ


▼ 会議中にさりげなくエルヴィンに褒められて照れる分隊長主


「特別作戦班は、中央五列……この辺りだ」


エルヴィンが、地図に描かれた一点を指差す。中央の後方。荷馬車班よりも、安全とされる位置だ。
だが、それを覗き込むリヴァイ班の面々は一様に神妙な面持ちをしていた。
無理もない。 今の調査兵団の要はエレンだった。絶対に、守らなければならない。何者からも。
エレンの居場所は、一般には伏せられる事になっている。


「我々が先行する形となる。ハンジ、ミケは両翼へ。ナナバは新兵を引きいてもらいたい」

「了解した」

「わかったよ」

「ナナシはどこになるんだい?」


それぞれに頷く中、ハンジが問いかけてくる。
今日はまだ、そこまで詰めての話し合いではなかった。大まかな位置取りだけを知らせるものだ。俺もまだ配置は聞いていない。


「あの、ナナシ分隊長も私達と一緒ではないんですか?」

「作戦班はリヴァイに任せるつもりだ」


続いたラルの質問にも、その答えが返された。
エルヴィンの中では、もう作戦は固まっているらしい。
今兵団に取り入れられている長距離索敵陣形を考案したのも、エルヴィンだった。
エレンの実用性を示す為の作戦の全体像を、もう掴んでいるのだろう。


「リヴァイ、いいな?」

「あぁ。戦力は分散させた方がいいだろう…それに、コイツなら囮にも使える」

「エレンの影武者でも作るつもりか?」


リヴァイの放った囮という単語に、リヴァイ班が僅かに動揺する様子が窺えた。

それならそれで構わないのだが。
……いや、まさか初めから、そのつもりで俺も監視役に付けられたのだろうか?
リヴァイだけに的を絞らせない為に?
思い付いたその考えにエルヴィンを見れば、それが伝わったわけではないのだろうが、丁度横に首を振った所だった。


「囮ではないが、ナナシには頼みたい事がある」

「頼みたい事?」

「腕の立つ、信頼出来る者にしか任せられない用件だ。ナナシが適任だろう」

「…………」

「内容は追って連絡する。お前の判断力に期待している」


目が合い、思わず。
沈黙してしまった。
普段は言わないような事を、いきなり、なんだ。
信頼。期待。
そんなエルヴィンの言葉が運んできた感情に、内心で戸惑う。

だが、そんな動揺には気付かれなかったらしい。俺の返事を待つ事もなく、エルヴィンは次の指示へと移っている。


「……すみません。よろしいでしょうか、団長」


そして、どうやら取り残されていたのは俺だけではなかったようだった。
おずおずと、手が上がる。戸惑ったような顔をしている、ジンだった。


「今回の壁外調査は行って帰ってくるだけ、なんですよね…?」

「あぁ、そうだ。エレンをシガンシナへ送るための試運転だと考えてくれ」

「はっ!」

「エレンは必ず守ってみせます!」


気合いが入ったように、ジンとシュルツが敬礼する。それを一瞥したリヴァイが、低い声で告げた。


「おい…当然の事を叫ぶんじゃねぇ。お前らはこの話をエレンにも伝えてこい」

「す、すみません兵長!」

「行くぞ、お前ら!」

「ちょっと、オルオ!どうしてアンタが仕切るのよ!」


そんな風ににぎやかに、リヴァイ班の四人が離れていく。
ふと視線を感じて横を向けば、ハンジが
にやつきながらこちらを見ていた。


「ナナシ、良かったね」

「………………」


目敏く、気付いていたらしい。
どう反応すべきか迷い──取り敢えず、無視しておく事にした。



***

さり…げないでしょうか…!?
褒め……てますでしょうか…!?
すみません!
りなさま、リクエスト有難うございました!

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