「イェーガー…俺は今日、死ぬのかもしれない」

「えっ…ど、どうしたんですか?」

「然るべき報いというのは…俺にも訪れるものなのか。あの時、止めてやれなくて悪かったな…」

「なんの話ですか!?ナナシさん…!?」


イェーガーにそれだけを告げて、俺は足を進める。
兵士には、引けない状況がある。今がその時だった。

見慣れた背に、後ろから近付いていく。 もう心は決まっていた。あとは実行に移すだけだ。


「リヴァイ、ちょっと」


肩に手をかけ、そう呼び止める。
普段ならそんな事はしない。 潔癖のきらいがあるリヴァイは、接触される事があまり好きではない。
それでも、今回はそうしなければならなかった。

グイ、と肩を引き、不機嫌そうに振り返ってきたリヴァイの頬に軽く口付ける。


バサッ!!
ガツッ!!
ゴンッ!!


とあたりから何やら色々な物音が響いてきていたが、今はそちらに気をやる余裕はなかった。
見開かれた目が、俺を見る。
驚愕以外のなにものでもなかった。


「…………」

「…………」


沈黙が痛い。
俺もリヴァイも鳥肌が立っている。
計り知れないダメージだった。


「………なんの真似だ?」


聞いた事もないような低い声だった。
怒り…というよりは、いっそ無に近い。振り切っている。
どうでもいいが、もしかしたら屈んだのも悪かったのかもしれない。


「然るべき報い…の代行、かな」

「報い?今のがか」

「ダメージ優先で」

「ほう…」


じりっ、と。後ずさる。
痛み分け、という言葉は通じそうになかった。 今のリヴァイはキレている。マジギレというやつだ。


「ナナシよ…短い付き合いでもなかったが…お前の残した意思は、俺が引き受けてやるよ」


死を覚悟していなかったわけじゃない。でも一体…なんのために死ぬんだ…

そんな一言が頭を過り、俺は全力で逃げ出した。

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