「おい、エルヴィン。これはどういう状況だ?」


いきなり雨に降られた。
マントがあればまだマシだったのだろうが、生憎と持ち合わせてはいなかった。
止む気配のないそれに諦めて濡れてきたのはいいが、肌に張り付く不快な感触に舌を打つ。
ブーツの中も最悪な事になっていた。
気持ちわりい。
早く屋根のある場所へ。
そう足を早めていると、驚くべきことに、この雨の中で集まっている四人の姿が目に入ってきた。

エルヴィンとミケが何事かを会話している。ナナシは何を考えているのか空を見上げているだけだし、ハンジは一番の謎だ。兵団のジャケットを二重に着用している。しかも片方は体の表側から腕を通していた。不恰好にも程がある。何がしたい。


「早かったな、リヴァイ。ここで偶然顔を合わせて話込んでいただけだよ。まさか私も五人揃うとは思わなかったが」

「…屋根のある場所へ入ったらどうだ」


四人もいて、何故それを思い付かない。
それぞれにずぶ濡れとなっている姿を見詰める。不快ではないのか?


「ここまで来たらもうなにも変わんないよ。リヴァイも諦めたらいいのに」


ハンジが笑っているが、若干眼鏡が曇ってきている。お前が一番変わりすぎだ。

俺たちがそんな会話を交わしている間に、ナナシとミケが何やらこそこそと話し込んでいた。こちらに背を向けて、互いの頭へと手を伸ばし合っている。
不可解な行動に、全員の視線がそちらへ集まった。

そうして何を納得したのか頷き合うと、くるりと振り返ってきた。
二人揃って見事な七・三分けになっていた。


「…………ッ」

「ぐっ…ゴホッ、ゴホ!」


エルヴィンは堪えたようだが、ハンジは失敗して咳き込んでいる。
雨で額に張り付いた前髪が、ぴっちりと横に流されていた。

二人揃って無表情をやめろ。


「…なぁ、リヴァイ。折角だからお前も」

「するわけねぇだろ」

「エルヴィンとお揃いだぞ」

「だからなんだ…。おい、回り込むな…!」


何があったというのか。
ナナシとミケがじりじりと距離を詰めてくる。
揃いだから何だというのだ。
揃えてどうする。
意味がわからねぇ。
沈めても問題ないだろうか。
チラリとエルヴィンを窺えば、何故か楽しそうにこちらを眺めていた。
敵しかいない。


「エルヴィンは髪下ろしてた方が格好いいと思うんだけどなぁ」


そんなハンジの声が聞こえたが、馬鹿二人の相手をするにはそちらに構っている余裕はなかった。



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