8
※突然の学パロ(先生×生徒)
「先生」
「ん、どうした?」
先生は私より頭一つ分以上背が高い。傍に寄って見上げると首が痛くなって、それでもその整った顔とか私を映す甘い目を見つめていたくて、だから先生と二人で過ごす時は私は大抵先生の膝の上に座っている。今じゃそこが定位置みたいになってるけれど、ふとした瞬間に恥ずかしくなって、私は何度も尋ねてみた。重くない? その度に先生は何でもない顔で、重くない、と、そう言って私を抱きしめるから、私はやっぱり先生に甘えてしまう。
「成績発表されてるの、見ました?」
「あ、まだ見てない。どうだった?」
二学期中間考査が終わったのが一週間ほど前。成績上位者三十名の氏名が貼りだされたのが今日。私は緩む頬を抑えることもせず、自慢気に胸を張った。
「学年五位でした」
「わ、すげぇじゃん。一学期末って十五位くらいだっただろ?」
「そうです。……私、頑張りましたよね」
先生の胸にそれとなく頭を寄せてみる。単純な子供の扱いにとっくに慣れてた先生は私の求めるものを知っていて、その大きな手を私の頭の上に乗せてきた。
「ああ、偉い偉い」
くしゃり。手のひらがちょっと大雑把に頭を撫でて、先生に会う前にちゃんと整えてきた髪を乱していく。けれどもそんなことは全然問題じゃなくて、私はただただ胸を満たしていく暖かさが嬉しかった。
「なんか、ご褒美とかあげたほうがいいか?」
「んーん……先生が撫でてくれたからいいです」
頭を撫でられただけで疲れなんかは全部吹き飛んで行ってしまった。どうして先生の手はこんなに心地いいんだろう、とろけそうになりながら不思議に思う。その謎は未だ解明されていない。
先生ははあ、と息をついて、嬉しがっているような呆れたような、宙ぶらりんの表情を浮かべた。
「あんた、そんな可愛いこと言ってると悪い大人に弄ばれちまうぜ」
「先生みたいな?」
「そうそう」
甘い目がほんの少し暗くなって、それなのに爛々と輝いて。ああ、キスされちゃうな。そう思って、私はそっと目を閉じた。
唇に柔らかいものが触れる。背中に回された先生の腕が私を抱き寄せる。先生は地学教師の癖に筋肉質な逞しい身体をしていて、背も高くて、見た目の通り運動も得意。どうして体育教師にならなかったんだと生徒から茶化されるのもいつものことだった。
余計なこと、考えるなよ。そう言うみたいに、湿った舌先が唇を上下に割って私の中に入り込んできた。ぴたりと合わせた口の中に忍び込んだそれは感触を味わうみたいにねっとりと私の舌に絡みつき、軽く吸ったり、時々舌の裏をなぞったりして、まるで私で遊んでいるかのようだ。その動きに翻弄されて私の心臓は次第に熱くざわめき始めた。胸と胸の間に挟まっていた腕を引き抜き、それを先生の首の後ろに回してさらに隙間を埋めていく。
心臓の音はうるさいくらい。鼻からはとろけきった息が抜けて、私はもう、何をされているのかも分からなくなる。
「そんな顔したらだめだろ」
私の唇を指でなぞりながら先生は笑った。ただ触れられているだけなのになんだかいやらしく思えてしまったのは、あの大人のキスのせいだ。今の私が触れさせてもらえる、精一杯の大人の欠片のせいだ。
「先生って、ずるいなって思います」
「大人はずるいもんだよ」
先生はそう言って笑った。まだ若くて、制服を着たら何事もなく高校生に混ざれちゃいそうなのに、先生はやっぱり年上の男の人なんだ。余裕そうなところがまたずるい。でも、そういうところも好きだなあ、なんて私は思ってしまって、そんな気持ちにさせるところもずるいんだともう一度頬を膨らませた。
ああ、悔しい。けれど、私はどうしようもないくらい先生に惚れ込んでいて、最終的にはどうしたって大好きって想いに行き着いてしまう。
「先生、やっぱり、ご褒美もらってもいいですか?」
「いいけど、何が欲しいんだ?」
先生は他の人が見たらびっくりするだろうなってくらい甘い顔をしていた。無意識なのかな。何でも叶えてくれそうな、そんな表情。私はそれに甘えて、どきどきしながらお願いを口にした。
「卒業したら、私を先生のものにしてください」
先生は垂れ目がちな優しい目を丸めて、口をぽかんと開けたまま固まった。そのまま、たっぷり五秒。
「あー……うん」
大きな手が私の好きな顔を覆ってしまう。その「うん」が肯定なのかそうでないのかはいまいち判別がつかなかったのだけれど、指の隙間から見える肌が段々と赤く火照っていく様子は、しっかりと私の目に映っていた。
「……それ、俺へのご褒美だと思うんだけど」
まんざらでもない答えと、ほんの少し崩れた余裕が嬉しくて、私は思わず笑ってしまう。先生を誘惑しちゃいけません、なんて照れ隠しの注意をして、先生は私の声を封じ込めた。でも、そんなの今更すぎる。本当はキスもいけないんだってこと、先生なら知ってたでしょ?
※突然の学パロ(先生×生徒)
「先生」
「ん、どうした?」
先生は私より頭一つ分以上背が高い。傍に寄って見上げると首が痛くなって、それでもその整った顔とか私を映す甘い目を見つめていたくて、だから先生と二人で過ごす時は私は大抵先生の膝の上に座っている。今じゃそこが定位置みたいになってるけれど、ふとした瞬間に恥ずかしくなって、私は何度も尋ねてみた。重くない? その度に先生は何でもない顔で、重くない、と、そう言って私を抱きしめるから、私はやっぱり先生に甘えてしまう。
「成績発表されてるの、見ました?」
「あ、まだ見てない。どうだった?」
二学期中間考査が終わったのが一週間ほど前。成績上位者三十名の氏名が貼りだされたのが今日。私は緩む頬を抑えることもせず、自慢気に胸を張った。
「学年五位でした」
「わ、すげぇじゃん。一学期末って十五位くらいだっただろ?」
「そうです。……私、頑張りましたよね」
先生の胸にそれとなく頭を寄せてみる。単純な子供の扱いにとっくに慣れてた先生は私の求めるものを知っていて、その大きな手を私の頭の上に乗せてきた。
「ああ、偉い偉い」
くしゃり。手のひらがちょっと大雑把に頭を撫でて、先生に会う前にちゃんと整えてきた髪を乱していく。けれどもそんなことは全然問題じゃなくて、私はただただ胸を満たしていく暖かさが嬉しかった。
「なんか、ご褒美とかあげたほうがいいか?」
「んーん……先生が撫でてくれたからいいです」
頭を撫でられただけで疲れなんかは全部吹き飛んで行ってしまった。どうして先生の手はこんなに心地いいんだろう、とろけそうになりながら不思議に思う。その謎は未だ解明されていない。
先生ははあ、と息をついて、嬉しがっているような呆れたような、宙ぶらりんの表情を浮かべた。
「あんた、そんな可愛いこと言ってると悪い大人に弄ばれちまうぜ」
「先生みたいな?」
「そうそう」
甘い目がほんの少し暗くなって、それなのに爛々と輝いて。ああ、キスされちゃうな。そう思って、私はそっと目を閉じた。
唇に柔らかいものが触れる。背中に回された先生の腕が私を抱き寄せる。先生は地学教師の癖に筋肉質な逞しい身体をしていて、背も高くて、見た目の通り運動も得意。どうして体育教師にならなかったんだと生徒から茶化されるのもいつものことだった。
余計なこと、考えるなよ。そう言うみたいに、湿った舌先が唇を上下に割って私の中に入り込んできた。ぴたりと合わせた口の中に忍び込んだそれは感触を味わうみたいにねっとりと私の舌に絡みつき、軽く吸ったり、時々舌の裏をなぞったりして、まるで私で遊んでいるかのようだ。その動きに翻弄されて私の心臓は次第に熱くざわめき始めた。胸と胸の間に挟まっていた腕を引き抜き、それを先生の首の後ろに回してさらに隙間を埋めていく。
心臓の音はうるさいくらい。鼻からはとろけきった息が抜けて、私はもう、何をされているのかも分からなくなる。
「そんな顔したらだめだろ」
私の唇を指でなぞりながら先生は笑った。ただ触れられているだけなのになんだかいやらしく思えてしまったのは、あの大人のキスのせいだ。今の私が触れさせてもらえる、精一杯の大人の欠片のせいだ。
「先生って、ずるいなって思います」
「大人はずるいもんだよ」
先生はそう言って笑った。まだ若くて、制服を着たら何事もなく高校生に混ざれちゃいそうなのに、先生はやっぱり年上の男の人なんだ。余裕そうなところがまたずるい。でも、そういうところも好きだなあ、なんて私は思ってしまって、そんな気持ちにさせるところもずるいんだともう一度頬を膨らませた。
ああ、悔しい。けれど、私はどうしようもないくらい先生に惚れ込んでいて、最終的にはどうしたって大好きって想いに行き着いてしまう。
「先生、やっぱり、ご褒美もらってもいいですか?」
「いいけど、何が欲しいんだ?」
先生は他の人が見たらびっくりするだろうなってくらい甘い顔をしていた。無意識なのかな。何でも叶えてくれそうな、そんな表情。私はそれに甘えて、どきどきしながらお願いを口にした。
「卒業したら、私を先生のものにしてください」
先生は垂れ目がちな優しい目を丸めて、口をぽかんと開けたまま固まった。そのまま、たっぷり五秒。
「あー……うん」
大きな手が私の好きな顔を覆ってしまう。その「うん」が肯定なのかそうでないのかはいまいち判別がつかなかったのだけれど、指の隙間から見える肌が段々と赤く火照っていく様子は、しっかりと私の目に映っていた。
「……それ、俺へのご褒美だと思うんだけど」
まんざらでもない答えと、ほんの少し崩れた余裕が嬉しくて、私は思わず笑ってしまう。先生を誘惑しちゃいけません、なんて照れ隠しの注意をして、先生は私の声を封じ込めた。でも、そんなの今更すぎる。本当はキスもいけないんだってこと、先生なら知ってたでしょ?
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