負けました



「……マジかよ…っ!!!!」

「まあ、当然だな」

「くっそおおぉぉお!!!!」



和泉に負けた。
すっげぇ自信あったのに、負けた。
数学のテスト。

毎回俺が勝ってんのに、何故か今回だけ点差余裕で負けた。


「約束覚えてんだろ、忘れたとは言わせねえからな」

「ぐっ…くっそ…」



テストの二日前、俺は和泉とある約束を結んでいた。



『明後日の数学のテスト、点数が高かった方の言う事を聞くってのはどうだ』


『はッ、楽勝だな!やってやるよ』



てな感じで。


(なんであんな約束しちまったかなあ…やめときゃ良かった)



「お前今日、泊まりに来い」

「はあ!?何で…」

「…『言う事聞く』んだろ…?」

「……っだあぁぁもう!!仕方無ぇな!!!!」


前を歩く和泉に、渋々付いていった。





「いつ来ても綺麗に片付いてんなオイ」

「当たり前、お前の部屋が汚すぎるだけだ」

「うるせえな!!」

「口答え厳禁だ」

「う…」


約束は約束だ、素直に従ってやる。今回だけ。


「何でも言う事聞くんだな?」

「…俺の許せる範囲でな」

「まあ考えてやらない事もないが」

「考えろよ!!」
(ああ厄介だ…こいつは何言い出すかわかんねえからな)


とか何とか色々考えているうちに、ふと一点、室内の変化に気付いた。


「…ん、あれ」

「何だ」

「そこに掛かってる特攻服、前に来た時は無かったよな」


机とクローゼットの間に、和泉が愛用していた特攻服。
ハンガーに掛けられ、綺麗に纏められている。


「ああ、先週クローゼットを整理してら出てき…、 ……」


「……おい、和泉?」


突然言葉が途切れた。
黙り込んだ和泉に声をかける。


「……品川、」

「何だよ」

「ちょっとそこで寝とけ」

「……は?…ってうわ!!!!てめ、何す…っ」

「体勢そのままにしとけよ」


いきなり小さいベッドに無理矢理押し倒されたかと思えば、すぐに和泉が身体を起こし離れた。


「……!?」


頭上に疑問符を浮かべていると和泉が立ち上がり、クローゼットの方へ歩いて行く。


「これでも使ってみるか?」


活き活きとした(黒い)笑みを浮かべながら、特攻服のポケットから紅い鉢巻を取り出した。

途端、冷や汗が品川の額を流れる。


(余計な事言わなきゃ良かった…!!!!)


再び和泉が品川の上に跨がり、手際良く鉢巻で両手首をきつく縛っていく。
縛り終えると、和泉の首に腕を回しぴったりと密着した体勢になる。


「和泉……てめぇ覚えてろよ…!!」

「ああ、お前のこの格好一生忘れないだろうな」

「くっ…そ悔し…っ、ぅ」


足を抱え込まれ、踵から太股まで細い指がするすると滑る。

驚いた。
いつ下剥ぎ取ったんだよ、こいつ。


「ぁ、…っ」

「……すげえいい眺め」

「…ざ、けんな…!いつか、絶対仕返ししてや… ……ぅ」


言い切る前に口唇を塞がれる。
触れるだけの行為が、次第に深いものになる。


「……ぅ、ん…っ、」

「息しろ、死ぬぞ」

「…ぁ、はぁ…っ」


**


苦しそうに酸素を吸い込む。
いつもの事だが、こいつはキスが下手だ。
どうやら上手く息が吸えないらしい。


舌を吸い上げてやると、身体が敏感に反応するのが解る。
ゆっくり顔を離すと、蕩けた瞳がこちらを見上げてくる

それだけで下半身が疼くのだが、今はまだ、ぐっと我慢。


「…いず、み……っ、」

「品川、…愛してる」

「………キモい」


どうやら、いつもの様に「俺も」とは言ってくれないらしい。
手首を縛られているのが気に食わないようだ。


「……手首、痛てぇ」

「我慢しろ」


軽く返事をした後、慣れた手つきでネクタイを解き、ボタンを外す。
ネクタイで目も塞いでやろうかとも思ったが、これ以上品川の機嫌が悪くなるのも後々困るので諦め、床に落とした。


「うぁ、や……っ そこ、っ」

「本当、ここ好きだよな」

「違……っ!ぁ、う……!」


薄く色付いたそこに、舌先で優しく刺激を与えてやる。

しばらく愛撫に夢中になっていたが、気付くと品川は唇を血が滲む程強く噛み締め、執拗に良い処ばかりを攻めてくる舌の動きに必死に耐えていた。
痛々しく紅く染まった唇に口付け、楽にしてやる。


「声我慢すんな」


ぼろぼろと涙が溢れた。
両腕の自由が利かないこの状況は相当怖いようだ。


仕方無い、早く終わらせてやるか。

舌を離し、指を這わせ動きを早める。


「…ん、ふぁ……っ」

「……品川?」

「ぅ、あ、ああっ……」


何だ、いつもと違う。
いつもより少し…いや、かなり感度が良い。


まさかと思い、品川自身に手を伸ばし、優しく触れてみる。
布越しでも充分解る程、熱を帯びていた。
更に追い討ちをかけるように、柔く扱いてやる。



「…ぁ、ひあぁああ……っ!!!!」

「……え」



腕の中で、一際高い矯声と共に全身がびくびくと震える。



「…お前まさか」

「……っ」

「……もうイったのか…?」

「……だあぁああもう!!!!言うなぁぁ!!!!」


**


これ以上は無い程赤く染まった顔を背けて、恥ずかしさに震えた。

ちょっと触られただけでイくなんて、ああ、恥ずかしいにも程がある。



「…お前さ、手縛られてる方が感度良いんじゃねえのか?」

「ぇ…!違っ、絶対違」

「ほら、もう復活してるぜ」

「ふ、っぁ、……嘘…っ!」



再度指を動かすと、一度萎えたそれが元気に復活した。
和泉の笑顔が怖い。本気で楽しそうだ。


「もう嫌、嫌だ…!終了終了!!」

「今回はお前の意見は一つも通らない筈だが」

「死ぬ…!(恥ずかし過ぎて)マジで死ぬ…!!」

「すぐ終わらせてやろうとも思ったんだが面白くなってきたな…まあ死なない程度に、今日は五ラウンドで勘弁してやろう」

「ひぃぃやぁああぁあ………!!!!!!」






まあその後本当に五ラウンド闘った訳だが。


「今日も学校あんの完全に忘れてんだろうが、馬鹿和泉」


隣で気持ち良さそうに寝息を立てている恋人に、静かに囁いた。


床に落ちたままの眼鏡を拾ってやろうと思い身体を起こしたが、腰がなかなか言うことを訊かず、断念した。







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**で視点変わりますね多分 ごちゃごちゃで申し訳無い
目隠しネタは友人から貰いました

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