Fuchsia




いつもなら一緒に帰ってくる筈なのに、今日はどうしてかノボリが先に、しかも結構早めに帰っちゃった。置いて行かれた。
僕何かしたかな、と身に覚えの無い罪をふたつみっつと脳内で生成しながら玄関の扉を開ける。

ぐちゃぐちゃに脱ぎ捨てられた黒い靴。普段のノボリならこんなの有り得ない。普段の、なら。
二組の靴を整えて、共有の寝室の扉をゆっくりと開けた。


ああ、予想してた通り。


二人分の大きなベッドの真ん中に身を沈め、疲れきった顔で熟睡していた。
床には帽子と手袋、黒いコートが無造作に散乱し、机の上のボールからは相棒達が心配そうな顔で主人の様子を覗いていた。

大丈夫、とボールを撫で、ぐっすりと眠るノボリに優しく、白いコートを掛ける。
今までにも何度かあったけど、今日は特に疲れているみたいだ。床の荒れ具合には少し驚いた。


「最近挑戦者すごく増えたからね、嬉しい事だけど」


あんまり無理しないで。

額をするりと撫で、静かに唇を落とした。

散らばった衣類を慣れない手つきで畳み、カレンダーに目をやる。確か今日の夕飯当番は、


「あちゃー、やっぱり今日ノボリだった」


黒塗り三角にチェックを入れ、隣に赤いペンで逆三角を作る。
明日からの一週間を全て黒塗り三角に変え、寝室の電気を消した。



「夕飯できたら呼ぶからね」




それまで、おやすみ。














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極限に疲れると全部放り出して爆睡するノボリ
優しいのか鬼畜なのかわからないクダリ
そして夕飯は当番制だといいなという妄想。
洗濯担当がノボリで風呂掃除担当がクダリ、料理と部屋の掃除は当番制




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