「か……香川…っ」

「何だ」

「す………す…好き、だ…っ!」



実はこの台詞を香川に向けたのはこれが初めてという訳ではない。何度目か。
初めて告白した時は本当に時間が掛かった。もちろん言葉がやっと繋がった瞬間は異常なまでの心拍数と体温の上がり様にいよいよ死さえ覚悟した程だった。
しかし、そんな人一倍照れ屋な北見の頑張りに対しての香川の返事は



「ああ、俺も好きだ」



だった。

両想い。これで晴れて両想いとなった。
いや、まあそうだけど
すげえ嬉しいけど



あっさりし過ぎじゃね?



それから言葉が続く事は無く。
返事は貰った筈なのに、どこかはぐらかされた感があり、すっきりしない。伝えたい事を伝え、欲しかった返事が返ってきた筈なのに、もやもやする。

何度か同じように、その言葉が本当なのか確かめるように自分の気持ちを伝えてみる。何度言っても馴れないが。
毎回返ってくる言葉は同じ。
そんな香川の態度に不安を感じていた。
香川の「好き」と俺の「好き」は違うんじゃないのか。
ただ友達として好きってだけなんじゃないのか。

返事はまだ返ってこない。
やはり、今回もか。
そう思った。だが違った。



「……北見、」

「…え」



いつもと違う返答に少し驚いた。
どく、と心臓が大きく悲鳴を上げたのが解った。瞬間、
香川の顔がゆっくりと近付き、唇に温かいものが触れた。
そしてまたゆっくりと離れていく。
状況を理解するまでに五秒程掛かった。



「…な……っ…!香…川……!?」

「俺も、好きだと何度も言っている筈…だが」

其れから少し顔を俯かせながら、

「本当に好きじゃなければ、こういう事はしないだろう」

と。

一瞬にして、それまで北見に纏わりついていた不安が消し飛んだ。

嬉しかったり恥ずかしかったりでなかなか言葉が浮かばなかったから、とりあえず


「…悪い、(疑ってて)」


とだけ言っておいた。
そのまま流れで香川を抱き寄せてみる。
背中に腕が回される感触があった。

…うわ 俺この状況からどういう方向に持ってけば――――



「…ちょっとぉ」



背後から声が



「場所考えてよ…!!」



ドアの前で真っ赤な顔して立ち竦む杏奈が居た。





……あ、
ここ生徒会室だった







title:確かに恋だった

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