校内の人影が次第に薄れていく放課後

先程生徒会の仕事が片付いた頃に何故か和泉さんが生徒会室に入ってきて、

『帰んぞ、終わったら教室まで来い』

とだけ言って去っていった
多分、こんな時間まで学校で勉強していたのだろう

片付けを手早く終わらせ、三階へ早足で向かった

A組の入口に近付くと、赤々と染まった教室で一人席に座っている和泉さんを両眼が捕えた

声を掛けようとした瞬間、


「香川」


こちらを向いていない
…が名前を呼ばれた


「はい」

「こっち来い」

「…失礼します」


ゆっくり、教室に入る

入ってすぐ足を止めたが、近くまで来いという意味なのだろうと思い、目の前まで近付いた


「すみません、遅かったですか」

「…いや、別に」




……………


沈黙。
一瞬、時が止まったように感じた


「…香川」


「はい …っ、」



ネクタイを引っ張られ、身体全体のバランスが崩れた
そのまま重力に従い、椅子に座る和泉さんの胸にすとん、と身体が落ちた。


「……い、和泉さん…?」


只ひたすら黙ったままの先輩に、少し戸惑った。


「……あー、やっぱな」

「…え」


香川の頭を抱き寄せながら、優しく撫でる。
少し息苦しそう、だが。


「…すげえ落ち着く」

「な…何で、ですか」

「お前が昔と変わんねえ匂いしてっからだ」



昔、といってもそう遠くはない過去ではある
そういえば、昔もまた同じ事をされた覚えがあった


『お前、すげえ落ち着く匂いしてんな』

『…そうですか?』


確かその時はそのまま会話が途切れ、すぐ離れた様な気がした

けど、今は昔と少し雰囲気が違う事くらいは俺にも解った



「…和泉さんも、変わってないですよ」



煙草、変わってないですよね
なんて言いながら、

ふわり、と笑ってみせた。






以前は
こんなしなかった






(…お前やっぱ変わったな)

(和泉さんよりは変わってないと思いますが)

(…いや、外見の事じゃねえよ)









title:確かに恋だった

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