きっと悪い夢を見ているんだ


ねえさんのほそい腕を男の人が乱暴に引っぱった。ねえさんがいたい!って叫んだ。本当にいたそうだった。助けてっていってる。ねえさんが泣いてる。どうしよう。どうしよう。
思わず前に出ようとしたら、首のところがぴりっとした。お兄さんが首にあててる包丁で切れたみたいだった。じわじわ痛くなってきて、手でさわったら血がついてた。怖くて涙が止まらなくなった。足ががくがくして立てなくて、お兄さんによっかかるみたいになった。
いたい?ってお兄さんが笑って、首のところをなでた。怖くて声がでない。喉がひゅうひゅういって、息もちゃんとできていなかった。おじょうちゃん、ふるえてるね、大きい手が首をはなれて、服の中に入ってくる。包丁も入ってきてつめたい。切れちゃう。こわい。服がどんどんやぶけて、次はからだじゅうが切れちゃうんだと思った。
向こうからねえさんの叫び声が聞こえた。もしかしたら、ねえさんはもう切られちゃったのかもしれない。男の人がいっぱい集まっていてどうなってるか見えない。見えるのは、ねえさんの片っぽの手が、地面のところで暴れているのだけだった。そこから目が離せなくてずっと見つめていたけれど、そのうちにこっちにもいっぱい人が集まってきて、いつの間にか見えなくなった。お兄さんがなんだ、男の子かあ、って言ってからおれの顔を近くでじっと見た。目があった。怖くてなんにも考えられなくなるような、今までに見たことのない目だった。ほっぺをなでて、お兄さんがいった。まあいいか。


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