過去拍手お礼文…talk組



もしも生物とクロノスがRPGの住人だったら


ひどい嵐の日、山のほこらに住む大賢者のもとへ一人の青年が転がりこんできた。
彼は名を生物といい、伝説の剣を探す旅を続けているのだという。

「やー助かったよ、ありがとな兄さん」
「いえ、当然のことをしたまでですよ」

賢者クロノスは小さく笑い、生物にタオルを手渡した。

「さんきゅ。…賢者さんはずっとここに住んでるのか?」
「ええ、こうして山に籠もって修行をしているのです。…ついでに貴方のような旅人に道を示すこともしばしば」

へえ、と相槌をうちながら、生物は貰ったタオルでわしわしと髪を拭く。綺麗な黒髪を自ら痛めつけるようななんとも乱暴な手つきだった。

「…もし先を急ぐ旅でないのでしたら、ここに泊まっていかれてはどうですか」
「えっまじで?いいのかよ?」
「はい。私の物で宜しければ服もお貸しします」
「…賢者様!」

まるで神を崇めるように手を合わせて頭を下げる生物を見て、クロノスはニヤリと魔物顔負けの恐ろしい笑みを浮かべた。
彼の眼鏡が悪役っぽく輝いたのを生物は知らない。



「じゃーん!」

暫くして、生物が纏ったローブを広げて楽しげにクロノスに見せてきた。
あまり体格差がないため特に問題は無さそうだった。

「意外と似合いますね」
「そうか?俺はちょっと落ち着かないかな…」
「そうそう着る服ではありませんからね。…ところで生物さん、貴方果物はお好きですか」
「果物?なんで?」

不思議そうに目を丸くする生物の前に、透き通った桃色の液体の入ったグラスが差し出される。

「この山で採れた果物のジュースです。一杯いかがですか」
「わああすげえ!超いかがです!」

生物は子供のように瞳を輝かせ、グラスを受け取るとその中身を一気に飲み干してしまった。
自分が進めたとはいえ、あまりの豪快さに流石のクロノスも少し驚く。

「ふはー、ごちそうさま!…こうやって旅してるとさ、いろんな土地の物が食えるから得だよな!」
「…成る程、確かにそうかもしれません」
「うん。こないだ立ち寄った街も良かったよ、魚が美味くてね」
「魚ですか…海の方だったんですね」
「そうそう。あれは良かったな…あ、あとこの前なんかは砂漠で……ぁ…あれ…?」

旅の思い出を語る生物の身体が突然ぐらりと後ろに傾いた。

「あれ…?な、なんだこれ」

身体の自由がきかずにどんどん倒れていく彼をクロノスがそっと抱き留める。幸い頭は打たずに済んだ。

「…け、けんじゃ、さんっ…俺、なんかおかしいよ…」
「大丈夫です。暫くすれば戻りますから」
「…!?あ、あんた何かしたのか?」
「何のことですか、私にはさっぱりです」
「…う、嘘だ!絶対嘘だぁっ!」

幾ら賢者だとはいえ、あのクロノスが無償であそこまで親切にする筈が無かったのだ。
そして生物は早くに気付くべきであった。

「や、やめろ、ほらこれ拍手お礼文だからな?なっ?」
「そうですか」
「軽!…うわぁぁあ待て!待てってば!アッーーー!」



おわり。

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