今日は朝から最悪だった。
あんな恥ずかしい事はあったし、1限目が終わった後の休み時間、風紀委員会から来月の体育祭の警備についての書類に加えて、“早合点はやめたほうがいい”と書かれた紙も届いた。
あぁ、処理しなければいけない書類が増えた。



廊下を歩けばいつも以上に周りの視線が痛い。生徒会室に閉じこもっていたいと思っていても、神様は残酷だ。
副会長の1人であるエステリーゼ様に生徒会に関することで聞きに行かなければいけない。今は昼休みだから、彼女は自分の教室にいるだろう。


彼女のクラスはSクラス。学力、家の財力等を総合的に考えて、学年トップ10が入れるクラス。
全校生徒の憧れの対象でもある。
そのクラスに、僕の頭を悩ませている人がいる。ナマエ・ミョウジ…。

Sクラスなのに、定期テストの結果の貼り出しで上位の方に彼の名前を見た事がない。けれど、家は有名な財閥らしい。
風紀委員長は風紀委員の中で一番スポーツが出来る人がなるから、スポーツは出来るんだろう。あのガイが副委員長なんだから、足とか凄く速いんだろうなぁ。




Sクラスの教室の扉を開けようとする。腕が重い。
だけど、個人的な理由で会長としての仕事を怠るなんて言語道断。
もういい。何か言われたら無視すればいいだけの事だ。
そう自分に誓って、目の前の扉を開けた。



「お、フレンじゃねーか」

「ユーリ!どうして君がここに…」

「見てわかるだろ、飯食ってんの」



まあ、見れば分かる。
いくつかの机を囲んで、ユーリやエステリーゼ様、ルーク、アッシュ、ナタリア、リタ。そして僕と同じクラスのガイとティアが揃って昼食をとっている。



「フレンはどうしたんです?生徒会の仕事ですか?」

「体育祭の事で聞きたい事が…」



本当に副会長がエステリーゼ様とソディアで良かったと思う。
去年の生徒会は風紀委員の妨害とかがあって、仕事がなかなか進まなかったらしい。だけど今年は妨害と思われる行動が全くない。

そういえば、当初僕が想定していた人からの馬鹿にされる言葉が聞こえてこない。
風紀委員の仕事をしているのだろうか…。でも副委員長のガイは此処にいる。どうしてだろう?



「ミョウジさんは?」

「ナマエか?居るわけないだろ。あいつ小学生入ってから授業受けた事ねぇし」

「ナマエは授業を受ける必要がないのよ」



僕の中で風紀委員長の理想像が音を立てて崩れた。
生徒の見本であるべき立場の人が授業を受けた事がないなんて。
小学校、中学校はそれでも大丈夫だったかもしれないけど、僕達は高校生だ。ある程度授業を受けなければ進級に関わってくる。



「それとフレン。先生方から生徒会への依頼で、ナマエに1回でもいいから定期テストを受けさせてほしいと」

「今までの定期テストも受けていなかったという事ですか?」

「はい…」



エステリーゼ様は目を伏せて、申し訳なさそうに応えた。


そこまで聞いて、僕はこの教室を飛び出した。飛び出したといっても、急ぎ足で出ていく僕を止めようとするユーリの声が聞こえたけど無視した。
廊下の真ん中を歩く僕と擦れ違う生徒達は、血相を変えて壁に全身がつくくらい寄っていた。余程、今の僕の顔が怖いのだろう。


彼は風紀委員長だ。生徒の手本となるべき立場だ。
なのに授業や定期テストを受けないだなんて……僕は絶対見過ごせない。











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