僕は今、僕より頭2個ぐらい人から睨まれている。

風紀委員長―ナマエ・ミョウジ。僕と同じ高2で、彼は一番レベルが上のSクラス。
僕はその次のAクラスで、教室では顔を会わさない。顔を会わすのは委員総会のような会議や、こうして僕が他の委員会の仕事を手伝うとき。



「登校時の校門での挨拶、服装・荷物検査は風紀委員の仕事のはずなんですが……」



ミョウジさんの後ろに控えている風紀委員が揃って頭を縦に振る。
そう、僕が今手伝おうとしているのは風紀委員の朝の仕事。


航空会社社長令嬢、スポーツメーカー社長子息、財閥の跡取りなど、全国から集められた金持ちの子供が通うこの学園の高等部は寮制で、校舎へ入る生徒数が最も多い時は、人数の少ない風紀委員が忙しそうだった。
だから手伝おうと思ったのだけど、彼らには手伝いという名の邪魔をしに来たと思われたんだろう。



「一体、どんな思惑があるのか知りませんが…」

「いや、だから…」

「会長には来月の体育祭に関する書類作業がまだ終わってないのでは?」

「……………」



どうしてそれを知っているんだろう。生徒会と風紀委員は昔から犬猿の仲だから、敵の情報は調べているのが当然という事か。



「連れて行って」



その指示を受けて、彼の後ろから現れた、3年の男の風紀委員の先輩2人に両腕を掴まれて、生徒会の執務室である生徒会室に放り込まれた。



会長の机の上には未処理の体育祭に関する書類や、生徒から生徒会への依頼書、書類作業に使うペンなどが置いてあった。

会長専用の椅子の後ろには、校門が見える窓があって、そこから登校してきた生徒達が見える。生徒達をチェックしている風紀委員達は案の定忙しそうだった。
その中で一際生徒達が多く集まっている場所があって、中心にはあの風紀委員長がいた。

どれだけの生徒が委員長に捕まっているのかと思うと、呆れてため息が出た。だけど、委員長に捕まったのにも関わらず、彼と話している生徒は笑っていた。


何故。
捕まって喜んでいる生徒があんなにも多くいる筈がない。
じゃあ何だ。彼は職務を怠って、他の委員に仕事を任せて、仲良くお喋りか。
そんな事、許されるはずがない。他の風紀委員は真面目にチェックをしているというのに。



「そこの風紀委員長!!どうして君だけ仕事をしていないんだ!」


ここから怒鳴ってやろうと、勢いよく窓を開けて、彼に届くように声を張り上げると多くの生徒が僕を見た。
呼ばれた張本人は、訳が分からないとでも言うような顔で振り返った。彼の周りにいる生徒達も分からないらしく、目で会話している。

彼から目を逸らさないでいると、自分の間違いに気付いた。大声で彼を呼んだ自分を殴ってやりたい。
どうしてよく見なかったんだ……彼の腕の中には誰かの鞄があるじゃないか。多分、今まさにその持ち主の荷物チェックをしているのだろう。なのに僕はなんて事を…。


顔だけでなく、全身が熱くなっていくのが分かる。



「や、やっぱり…ごめん!!」



急いで窓を閉めて、その場に崩れ落ちた。

朝から最悪だ。











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