僕はまだ落ち込んでいる。原因は今日の体育。
たった10分。されど10分。あんなに内容が濃い10分は初めてだ。



こんな状態の僕の部屋に押し掛けてきた、赤、黄、黒の髪色をした4人に目眩がした。
勝手にやってきて、持参のお菓子をバリバリ食べている。


いいよなー会長は個室で広い部屋貰えて。そう呟くルークに聞きたくなった。
どうしてルークはそんなに明るいんだい!?確か君もあの10分の後、頭からタオルを被って下を向いてベンチに座っていたよね?あぁ、ルークだからか…。納得。



「今日もしかしたらイケる!って思ってたんだ」

「何がイケるんだよ」

「俺ナマエと同じチームだったろ?だからナマエと話せると思ったんだけど、無理だった」

「あれは見ていた俺らでも生きた心地しなかったぜ」

「フレン、大丈夫か?」

「大丈夫そうに見えるかい?」



フフフ…、と乾いた笑いを溢せば、いつものフレンじゃねぇから怖ぇーって言われた。



「ナマエは本当に変わったよ。10年もまともに話していないからか知らない人に見えた」

「アッシュ達はいつからナマエの事知ってるんだ?」

「生まれた時からだ。家は近所で幼なじみの関係だ」



じゃあなんで今は一緒にいないんだよ。純粋な疑問をユーリは彼らにぶつけていた。

確かに。幼なじみの関係なのに、ミョウジさんだけ一緒にいない。



「理由がわかったら苦労しねぇよ。まぁ、社長だから忙しいっていうのはあるかもな」

「社長って…誰が」

「フレン……これ、有名な話だぞ!?高校生社長、ナマエ・ミョウジ!」



揃って溜息を吐かれた。いや、高校生社長がいるのは知ってたけど…それが誰か知らなかっただけだよ。
まさか、ミョウジさんが社長とは…。



「社員に嫌われてそうだよね。自尊心高すぎて」

「残念だけどそれは違うぞ。寧ろ逆。例えるなら朝の登校風景」

「そして経営手腕も一流だ」



ちょっと借りるぜ。僕の勉強机の上にあるノートパソコンを僕達が囲んでいるテーブルにガイは持ってきた。
打つの早いな。パチパチとキーボードを触る姿は似合っていた。
眼鏡、かけたらいいのに。



ナマエが家の仕事に参加したらこうなったんだよ。僕達にも見えるように画面をこちらな向けてくれた。

詳しくは知らないけど、多分年間の事業売上のグラフだと思う。横が年、縦が収益額だから。


ほら、この年と前の年の差が激しい所があるだろ?この年からナマエが参加したんだ。とガイが指すのは10年前の年。
そこだけ特に前年と比較したら差が激しい。2倍どころか20倍もアップしている。



「この年って確か…俺達が小1の頃じゃねぇか!どうして小1のガキが家の仕事に加わってんだよ」

「母親が……亡くなったんだ」

「俺らが6歳の時にな。雪が降っていて、事故死だそうだ」



ナマエの目の前でな。とアッシュは加えた。

初めて知った。ミョウジさんの事。
ただ嫌味で、自尊心が高い人だと思っていたのに。過去にそんな事があったなんて…。



「これはあくまで予想なんだが、父親と自分とこの財閥を支えなきゃって思ったんじゃないかな。
ナマエの両親は凄い人でさ、色々な大会で優勝したりで完璧な人だったんだ。だからその2人の子も完璧な人間だっていう周囲の期待も凄かった。
それに、父親一人で財閥を支えなければいけないのに、自分っていう重荷があったら駄目だと考えたんだろうな」

「ナマエだって幼等部の頃までは普通だったんだぜ?俺達と毎日のように遊んでいたし。今みたいに超人的な奴じゃなかった」

「皮肉なもんだな。才能が開花した原因は親の死なんてよ」



なんか暗くなっちまったな…と頭を掻くルークは、しばらく何かを考える素振りを見せて、閃いたぜ!と叫んだ。

アッシュはそれを、どうせくだらない事だろう、と馬鹿にし、ルークはお前ガイに失礼だろ!と反論した。



「フレン聞けよ!ガイってな……ナマエの事好きなんだぜ!!」

「る、ルーク!!」



大声で言うべき事なのか、それは。

もしさっきの事が廊下にまで聞こえたなら、般若の顔を携えた寮長がやってくるよ。
お前らぁ!うるさいんだよぉ!!廊下で朝まで正座するか?え!?
怒り狂った寮長が想像つく。



「にしても意外だな…今はあんな性格だっていうのに、ガイってば物好きだね」

「違うんだ、フレン!きっとナマエのあれは演技で!」

「夢見すぎでしょ」

「だろ?こいつ小さい頃からナマエの事好きでさ。いつも、あれは演技だ、演技なんだ!って言ってるんだぜ」

「……………」



ガクッと肩を落としたガイにかける言葉はない。



「ナマエが昔普通だったのが信じられないならエステルにアルバム借りてみろよ。あいつが一番写真の保管数多いから」





でも、ガイの考えは間違っていない可能性もある。

僕達に対する態度と、朝の荷物・服装検査の時の周囲に対する態度があまりに違いすぎる。

もし演技なら、ミョウジさんはどんな性格をしているんだろう。
多少興味はある。



「お前らぁ!うるさいんだよぉ!!廊下で朝まで正座するか?え!?」



想像していた事が現実になった。
パァン!と開かれた部屋の入り口には般若の顔を携えた寮長が立っていた。



「フレン……お前にプレゼントがある…受け取れ!」

「なっ、僕は寧ろ被害者です!」

「今何時だ?お?消灯時間過ぎてんだよ!いくらお前が会長様でもなぁ、寮内では寮長様が絶対なんだよ。わかったか!」



鳩尾に一発もらった。

引き摺られるようにして4人も出て行った。お菓子のゴミを残して。



ていうか………消灯時間10分過ぎたぐらいで反省文10枚って酷くないか?せめて1枚がよかった。

そもそも押し掛けてきたのは向こうだ。




ただ……明日エステリーゼ様にアルバムを貸して欲しいと頼もうと思う。











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