騎士団長になった私の恋人。

やっと彼の信念を反映出来る地位へと上り詰められた。
私自身にも喜ばしいことだった。凄く。本当に良かったと思っている。


けれど、一緒にいれる時間は確実に減った。





熱の共有






何だかんだでやっぱり淋しい。
会える時間は短く、待っている時間は長い。

彼は今、騎士団の再建に追われ、慌しく忙しい日々を送っていると聞く。


ちゃんとご飯食べてるかな?
睡眠も取れてるのかな?
思い悩んで、辛い思いはしていないかな?

そんな心配が悶々と膨れ上がる。


私に出来ることは、「会いたい」という我儘を閉じ込めて、彼の負担にならないようにすることだけ。

でも。


「やっぱり風邪をひくと、恋しくなるものよね…」


ははー、と私しかいない部屋に乾いた笑いが。

微熱程度の風邪ではあるが、喉の奥がヒリヒリする。鼻水も出るから息苦しいし。

最近下町で風邪が流行っていて、私も流行の最先端に来たらしい。嬉しくも何ともないけど。


とにかく風邪は栄養を取って、たくさん休む事で治るものだ。
いつもより早い時間だけど、今日はもう寝よう。

明かりを消してベッドに潜り込んだ。
掛け布団が冷たい。自分の温もりを吸収して、温かくなるまでは丸くなっていよう。


じっと。
瞳を閉ざして、静寂を聴き。

無意識に紡いだ愛おしい響き。


「…フレン……」



――コンコン。


扉をノックする、控えめな音。

こんな遅くに?と思ったが、実際はそこまで遅くない時間。

とにかく明かりを、と思ってベッドから這い出た時。扉が開いた。


扉が一人でに開くはずがない。無論、私が開けた訳でもない。
それならば、当然開けたのは当然扉の向こうのその人。


鍵閉めてなかったんだ、と頭の隅の自分が後悔。
ドクドクと血の巡る音が煩い。



「……あれ?ナマエ?」


「…って!フレン!」


なんと扉の奥から現れたのは、今まで焦がれていた恋人だった。泥棒か何かかと思っていた自分が恥ずかしい…。


「すまない、寝るところだった?」

「う、ううん!ちが、――っくしゅん!」


外気に触れて身体が冷えたせいか、突然の嚔を誤魔化せなかった。
穴があったら入りたい…。



「ナマエ。もしかして風邪ひいてるのか?」

「うん…」


俯いたまま肯定すれば、踵を鳴らして私の傍に。ベッドから出ていた身体を優しく戻す。

そして、



「――ん、…!?」


フレンの綺麗な顔が目前にあり。小さな熱を唇で感じる――キス。
触れるだけの優しく口付けを交わしていた。

驚いた反動で、無意識に引こうとした身は腕に阻まれる。
宥めるように背中を滑る手。お陰で漸く落ち着くことが出来て、その熱を受け入れた。


どれくらいの時間が流れたか忘れた頃。彼は私を解放する。ちょっと残念。


「風邪、移っちゃうよ?」

「いいさ。その方がナマエがキツくないだろう?」


何でもない顔で笑う。
一番に自分のことを考えてくれるフレンが愛おしいと同時に、心配になってしまう。


「それに、」

手甲の無い、武骨で温かい手が私のそれを包む。

淡い青の瞳を細め、一瞬だけ重ねた唇。


「風邪が移った時はナマエに看病して貰えるしね」



…ああ。

また熱上がっちゃったかな?







あなたと熱の共有



(じゃあ、今はナマエの看病しないとね)
(そんなに酷くないから大丈夫だよ。…それより、フレンと一緒に寝たいなー)
(ああ、いいよ)
(ありがと)




どんな形でも、君の傍に。


 



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