「行ってきまーす!」










今日の夕食の食材で足りない物があった為、ナマエはそれを買いに公爵家を出た。






元気よく出発したナマエとは裏腹に空はどんよりしている。
まるで空にいる天使か女神様が悲しみを堪えているかのように。











本日の天気、曇時々雨
降水確率は午前‐30% 午後‐50%

因みに今は午後。




確かナマエは傘を持たずに家を出た。直ぐに帰って来れる用事なら未だしも、用事がある店は此処からかなりあるし、ナマエは女性であるため俺より時間がかかる。














そう心配しつつも、使用人である俺は自分の仕事をしていた。

ナマエが出発してから30分、遂に雨は降り出した。
奇跡的にもどしゃ降りではなくて本降りだった。


今頃ナマエは雨が振り出して困っているだろうと思い、近くに居たメイドにリーシャを迎えに行くと伝え、傘を持って公爵家を出た。


もちろん、2本持って…


 


ナマエが用事のある店へ向かっている道中、ある店のショーウィンドウの前でこの雨で困っている子供を見つけた。




困っている人を見過ごせるわけがなくて、取り敢えずその子供と話してみると、ナマエのように、お使いの途中雨が降ってきて帰りたくても帰れないようだった。

だから俺はさしていないもう1本の傘をその子供に渡した。
すると子供は太陽のような笑顔でありがとうございます、と礼をして去っていった。


貸してから後悔した、だけどそれは直ぐに消え失せた。













「あ〜降ってきちゃった…」


やっと目的の店に着いた時に、そうナマエが呟いた。

ナマエはまだ此方に気付いていないらしく、今日の天気予報についてブツブツと愚痴をこぼしている。



そしてやっと気付いたのか、此方に体を向けた。


「あっ、ガイ」

「全く…ナマエは今日の天気予報を聞かなかったのか?」

「だって…午後からは50%だったから、それに曇って言ってたし……」


ナマエは不貞腐れて俺から顔を背けた。
多分、それは俺にではなくて天気予報に対して。



「せめて傘ぐらいは持っていけよ、ほら…」


ナマエに傘の中に入るように促すと、ナマエは不思議そうに俺の顔を眺めた。


「…傘、1本しかないの?」

「初めは2本あったんだが、道中君みたいな子供が居てね、貸したんだ」

「ガイらしいな〜、でも…その傘はガイがさしなよ、女性恐怖症でしょ?」


ナマエは俺の体質を考えてくれてるらしい。
だけど、そんな事で引き下がる俺じゃない。


「女性を差し置いて俺だけっていうのは駄目だろ」

「駄目だよ、傘を忘れた私がいけないんだから」


なかなか引き下がってくれないナマエ。
こうなったらアレしかない……


「じゃあ……」


ナマエの荷物を持っていないほうの腕を此方に引っ張った。

普通なら俺の胸に今頃ナマエの頭があるはずなのに、ナマエはギリギリのところで踏張って必死に俺に触れないようにしてるのを見て、俺はナマエは馬鹿だと思う。


だってもう……俺がナマエの腕に触れているから。



「ガイ!女性恐怖症は…!」

「大丈夫、ナマエだから大丈夫…」


ナマエを言い聞かせる為に、いや、俺を言い聞かせる為なのかもしれない。


やっと傘の中に入らない事を諦めたナマエは顔を背けて渋々入ってきた。そして……


「迎えに来てくれて…………ありがとう……」



それは、俺だけに聞こえるぐらいの小さな声で、そう呟いたナマエの耳はとても赤かった……。

「迎えに行くよ、ナマエがいるなら何処へでも…必ず……」







We will go there,rain or shine.
雨が降ろうが降るまいがそこへ行きます







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -