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各々の任務のため時空転移装置に集ったみんなを見送り、腹ごなしに本丸をぐるりと一周してみることとした。

まず道場では粟田口の複数名が出陣先でやや苦戦した展開をおさらいしたく真剣に話し合っていた。しかしその中でひとり真っ白なシーツがもたもたと動いていて、どうやらそれは仲間も忠実に再現していたからだそう。
あとでシーツをぞんざいに扱ったと怒られないか心配ではあるが、きっと山姥切国広の布が重要な流れなんだと思うのでわたしは口出しすることなく頑張ってねとだけ告げその場をあとにした。

次に出会ったのは布団を干している岩融と石切丸。そして、その近辺を元気いっぱいに駆け回る今剣。
今剣は一本下駄だというのに相変わらずバランスを崩したりせず、むしろバネのように軽やかな足取りである。
この本丸は大所帯なので一度に布団を干すスペースも労力もない。悪天候でない限り毎日数人ずつ干し、あとは個人的に日の当たる縁側に広げておくようだ。
そう考えているそばから来派が廊下に布団を出しているところだった。ところがすかさず明石がそこに寝転びブーイングが起きる。いいやろ減るもんじゃないやんなんて反抗する明石だが、呆気なく蛍丸に退かされてしまうのであった。

更に裏の方へ向かえば広大な畑があり、土の香りが心を穏やかにさせてくれた。桑名江がああいう性格になるわけだ、なんて納得しながらも黙々と作業する畑当番のものの集中力を切らしてはならないと長居せず執務室へ戻った。


本丸一周はほどよく身体全体が軽くなり、いい空気を吸え脳もすっきりとした状態になるとわかった。
さこで更に自分を追い込むためデスクの引き出しにしまっておいたミントが強めのタブレットを口に放り込む。
完全に仕事へのやる気スイッチが入ったわたしは、初めにメールチェックをする。昨夜の報告書に不備がなかったこと、新規審神者の健康診断に関するお知らせ、本丸同士で不用品を売買できるように専用のページができたこと。今日も盛りだくさんな内容であった。
その中で最も目を引くのは突然フリマの導入だったが、これをいちばんに見始めては時間が瞬く間に過ぎゆくと思い後回しにした。
最優先したのは健康診断のお知らせだ。審神者となるにあたり健康診断は既におこなわれている。ただ実際に霊力を用いて本丸を維持し始めてからひと月めの間に体調不良を起こす者が稀にいるため、その期間を目処に政府の建物内で実施されるそう。
このお知らせに添付されていたファイルは返信用の書類で、希望の日付を3つほど申告しなければならない。また検査前夜から食事制限が必要になるので、その同意した旨を示すよう作られている。
提出期限はまだ余裕があるけれど、なるべく早めに申告しておかないと希望が通らないおそれもあるとのことで生理予定日なども考慮しつつ何となく日付を打ち込んだ。

・・・健康診断か、間違いなく体重が増えている。

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