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かくかくしかじか、昨夜は鯰尾と骨喰とともに眠る流れとなった。
そして彼らによって目覚まし時計のアラームよりも早くに朝を知らされることとなり、まだもう少しだけ・・・とごねてしまったものの骨喰に軽々と上体だけ起き上がされ目を覚さざるを得なかった。
起こした本人の骨喰はすまないいつもの癖で、と申し訳なさそうにした。まさかの行動に驚きはしたけれど、彼らの日常を知ることができちょっぴり得したかもしれない。

日常といえば、鯰尾の寝相を心配し骨喰自ら真ん中で眠ると生贄になってくれたおかげで少なからずわたしには何も被害といえるものはなかった。
またそんな彼らも部屋を暗くしたらすぐに寝息がきこえ、どこでも眠れるタイプなのだろうと思いながらわたし自身も安心して深い眠りについた。


3人で歯磨きや洗顔を済ます最中、一期が寝室に迎えに来た。
既に身なりの整っている彼は、弟たちがわたしの部屋にいることを把握していたらしい。

「いち兄、どうして俺たちがここにいるとわかった?」
「風の音で目が覚めると、ふたりの布団はもぬけの殻となっていた。でもすぐ主の部屋に灯りがともっていることに気がついて、楽しそうな声も聞こえたよ」
「いち兄も参加すればよかったのに!夜のお茶会!」
「夜の、お茶会?」
「ここあというものをご馳走になった。その後の歯磨きはちゃんとした」
「そうですか・・・。主、弟たちがお世話になりました。主は弟たちをひとりひとり大切に想ってくださる。感謝の念に堪えません」

確かにわたしはふたりと談笑しているとき、一瞬誰かの気配を感じた。それが一期だったのかもしれない。
頭ごなしに早く布団に戻り寝なさいと言うのではなく、主であるわたしに託し遠くから見守る。そののち迎えに来たりわたしにも気を遣ってくれ、それもまた兄として立派な姿であるなと感心してしまう。

「いえいえ、わたしも楽しかったから。それにしても昨日は本当にすごい風だったよね。一期はその後ちゃんと眠れた?他のみんなもちゃんと眠れたといいけど」





身支度を終え朝ごはんの部屋にいく途中、清光と鉢合わせた。
研修2日目もとい波乱の継承初日振りに見る、洋装の姿。コートや手甲はまだ身に付けていないが、ボタンというボタンは全て止められかっちりとした装いだ。
おはよう、そう言えば彼と息ぴったり重なり軽く笑い合う。

「その姿、久しぶりに見る」
「袴もいいけど、こっちもかわいいでしょ」
「かわいい。かっこいい。すき」

自信たっぷりの視線で見つめてくる清光は更に首を傾げて同意を求める。わたしはそれに素直な気持ちで賛同すると、たまらなく嬉しいらしく満面の笑みで擦り寄ってきた。

「初めての遠征だね」

歩きながら今日その服装であることの意味を言葉にすれば、しみじみと感じるものが込み上げてくる。

「うん。主がちゃーんと朝起こしてもらえたからお見送りもしてもらえるね」
「・・・ご機嫌に見せかけ随分とご不満のようで」
「そりゃそーだって!俺いくらでも起こしてあげるのに」

昨夜安定と翌日の内番表を確認した際に例の内番を知り、そこから溜まった鬱憤が今一斉に解き放たれる。
そんなの内番にするほどのことか、服も選んであげるのに・・・と口を尖らせる清光にわたしの感慨深かった感情は何処へやら。

「やっと来た!もう遅いぞ清光、くるみも!」
「え、ごめん・・・?」

清光の身支度に痺れを切らした安定は既に食事を前にして座っていた。そしてわたしもそのとばっちりを受け怒られたのであった。

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