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夕飯後、第1部隊の報告をしてもらうため執務室に来てもらった。

戦国時代に出陣していた彼らは、勝つべきじゃない者たちに混じり勝たせようとしていた遡行軍を退治する任務が下されていた。
そして無事に歴史は守られ、こうして無傷で帰ってきてくれた。

ありがとう、あとはお風呂に入ってゆっくりしてね。と頭を下げれば、大倶利伽羅が真っ先に部屋から出て行こうと扉を開ける。
やっぱり少しも収まることのない風の悪戯に彼もため息をつく。
すると御手杵が今夜は窓や扉の閉め忘れがあると厄介なことになりそうだと言い、本丸をひとまわりしてからお風呂へ行ってくれることに。
日向も、お手伝いでもしようかな!と御手杵の背中を追って行った。
鳴狐とそのお供はこんのすけを誘ってお風呂に向かい、残るは長谷部と不動になった。
長谷部は近侍として明日のスケジュールを組むため残っていても不思議ではない。しかし不動はというと、出陣の疲労とお腹の満たされによりソファーに寝そべり動けなくなっていた。

「不動、主の前ではしたないぞ」
「このー、そふぁー?っていうんだっけ。こいつが悪いんだ、俺もう動きたくない」
「不動行光」
「ま、まあ・・・任務頑張ってくれたしお腹もいっぱいで、気持ちはすごくわかるよ!よっぽど面倒なら離れのお風呂使ってもいいから、って。寝ちゃった」

のんきに寝息を立てる不動に、唖然とするわたし。その傍らで長谷部が盛大なため息をつく。

「俺が部屋まで運びますから、構わず明日のお話を致しましょう」
「う、うんありがとう」
「まず先ほど加州の件、三日月から聞きました。以前ご説明しましたが、遠征でも時間遡行軍・検非違使・一般人からの攻撃を常に想定し編成しています。そして現在練度の低い加州を支援する事に相応しいものを選抜するならば、やはりここは新選組の刀。彼らに声をかけましょう。また、この任務の全責任を負う形で俺が部隊長を務めさせていただきます」

「・・・長谷部、かっこいいね」
「な?!」

みるみるうちに赤くなっていく長谷部。
彼自身プライド高きものだが、それに近侍としてのプライドが加わりますます尊敬の眼差しを向けてしまう。
わたしもこんな風になりたい。そう思いながらこの後も長谷部による近侍の務めを熱心にきいた。





「では、これで失礼します」
「わあ軽々と。そして起きない・・・」
「このくらい大した事ないですよ。しかしこいつは本当に手が掛かって仕方ない」
「うーん、まあ確かにわたしも接し方がわからないというか・・・。もう少し不動とお話の機会が必要かも。嫌がられるかな?」
「いえ、大層喜ぶでしょう。近いうちその機会お作り致します」
「うん、ありがとう。長谷部、今日もおつかれさま」

ソファーの上で気持ちよさそうに眠りにつく不動を、腹部に片腕を通し小脇に抱える長谷部。
彼はなんだかんだ言って不動のことを誰よりもよくみてくれていると思う。不動もそれをわかってこんなところで眠ったりしている気もする。

そんな長谷部はきっと、不動を自室に寝かせたらひと仕事しに向かうだろう。

うちの本丸は雨風凌げる廊下の壁に内番一覧が記された木の板があり、それに名前の掘られた札をかける。長谷部はそれを毎晩変えてくれる。
その木彫りの札は最初こそ前の審神者が作成していたが、刀剣男士と仕事量が増えるにつれとても手が回らなくなり今は江雪が作ってくれるらしい。

また、出陣も多い長谷部に仕事を押し付け過ぎではないかと他のものに代わりを頼む提案を口にしたのはわたしがここに来た初日。
しかしそのとき彼には自分では力不足かというかなしそうな表情をさせてしまったのをふと思い出す。
よかれと言ったつもりが失言でしかなかった。
よくよく考えてみれば、彼が本当にいっぱいいっぱいになってしまったとき抱え込んでいては効率的じゃないと判断し他の仲間たちへ仕事を振り分けそうだ。
その考えに至って以来、わたしはあまり過度な心配をせず代わりに労いの言葉をたくさんかけてあげようと決めた。

「主、只今戻りました」
「一期!おかえりなさい」
「皆擦り傷ほどの怪我ですが、弟たちの手入れをお願い申し上げる」
「もちろん。もう手入れ部屋にいるんでしょう?」

長谷部と不動が退室してから報告書を作成していたのだが、ノックとともに聞こえた凛とした声で扉の方へ顔をあげる。
本日第2部隊長として任務に当たってくれていた一期一振が帰還し、すぐにキーボードを打つ手を止め彼とともに手入れ部屋へ向かう。

「はい。手入れを要するのは4振り。乱、薬研、骨喰、毛利です」
「ってことは一期と鯰尾は無傷なんだね」
「ええ。ただ鯰尾は・・・」

言うべきか言わざるべきか悩み言葉を詰まらせる一期に、わたしは彼の選択をただじっと待った。


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