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「あ、そーだ。昨日の夜に話してた真剣の話、主にきいてもらわなきゃ」
「うん、でもくるみいないね」

ふたりしてきょろきょろと辺りを探してみるが、やっぱりどこにも見当たらず首を捻る。
厨房では朝食担当の長谷部が忙しそうにしてるし、他に知っていそうな人を探す。
正直俺はまだお仲間全員のことをよくわからない。だから安定が通り掛かったものに声をかけてくれた。

「おはよう数珠丸」
「お早う御座います」
「おはよ」
「あのさ、くるみってまだ来てないの?」
「先程三日月殿が呼びに向かわれたはずですが」
「そうなんだ。教えてくれてありがと。だってさ清光」
「そっかー、じゃまたあとでってことで。ありがとう数珠丸」


数珠丸に尋ねたあの段階で、食事の用意もできていて本丸のみんなもほぼ揃っていた。
それこそ居なかったのは朝食担当の他に主と三日月くらいで。呼びに行ってくれてるというし、それならいいかと思い食べ始めたけれど・・・

「おい、主と三日月はどうした」

長谷部が厨房から出てきて、誰かにというわけでもなく拍子抜けした顔で問う。
誰もわからないらしく、食事の手を止めて様子を窺うだけ。だから長谷部が前掛けを外し自ら離れに向かって行った。

「・・・・・・」
「任せておけば?ごはん盗まれても知らないよ」

俺も行きたがっているのを察して安定が焼き魚をほぐしながらやんわりと引き止める。

「・・・うん」

安定は口にしなくとも考えることは大体一緒だ。
でも俺はこの安定よりも心の扱い方がわかっていないから、このモヤモヤがうまく対処できなくて嫌になる。

「主に可愛がってもらいたくて早起きもして鏡と睨めっこしてるのにー、って」
「・・・それの何が悪いの」
「いいんじゃない?清光らしくて」
「え?」

どうせ馬鹿にされると思ってた。なのに、俺らしいって。それに不意に見せた笑みは、一体どんな意味が込められているのだろう。

「清光は十分特別だよ」
「何言って」
「こんなに大勢の主、だとしても埋もれることはない」
「・・・?」
「あ、戻ってきた」
「まったく・・・!」
「はっはっは」

安定、今の顔は何?怒っているとかそういうのじゃなくて、でもどこかで見たこともある気がしてならない。何処だった・・・?

そんなとき主の元へ向かっていたふたりが戻ってきた。しかしそこにいるのは何やらガミガミ怒ってる長谷部と、それをヘラヘラと受け流す三日月だけ。やっぱり主はいなかった。
俺は長谷部のとばっちりを受けないよう三日月を選んで声をかける。

「ねえ主は?具合でも悪いって?」
「いや。まあ、寝坊だ」
「身支度を終えたら食べにくるそうだ」
「・・・そっか」
「さて、俺も朝餉をいただくか」
「お前は出陣だろう、とっとと食え!」
「はっはっは、長谷部は脇差並みの世話好きだな」

なんていうか見ていて飽きないね、と安定に言うと見ている分にはねーと返された。

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