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この怪我は頑張った証。そう考えて手入れに励んだ。

みんなからの配慮もあって今回はその場の雰囲気がよく終始落ち着いていられたし、服も汚さずに済んだので執務室に戻るなりソファーへダイブする。

・・・流石にちょっとだけ疲労が残る。
けれどまだやるべきことは山ほどあるし、こんのすけにほんの少しだけ休憩させてもらえるようお願いした。

「出陣組、今日はちょっと遅いね」
「昨日が稀なパターンです。また、必ずしも夕食までに帰還するという訳でもございませんよ。数日掛かる任務だってザラですから」
「うーん、わかってるつもり。でもやっぱり暗くなる前に帰ってきてほしい。ごはんも一緒に食べたい」

この後のスケジュールはこうだ。出陣した2部隊が帰還して手入れが必要であればまた手入れ部屋へ向かう。そして今こんのすけが演練分の報告書は仕上げてくれているが、出陣分の戦績報告をしてもらったあと報告書の作成までおこなわなくてはならない。

「あ、そういえば。手入れ中、乱藤四郎殿がくるみさまにとお飲み物を持ってきてくださいました。冷蔵庫に入っております」
「えっ、ほんと?」

ソファーから起き上がるのが億劫になっていたところ、カタカタとキーボードを打ち続けるこんのすけの言葉に勢いよく起き上がり冷蔵庫を覗く。

「スムージーかな?」

紫色をした飲み物は表面にミントの葉が飾りで添えられている。
グラスと一緒に置かれていたストローで飲んでみると、いい塩梅に甘酸っぱいブルーベリーの味が口いっぱいに広がった。

「おいしいー・・・!」
「それはよかったですね。くるみさま、あともう少しで仕上がるので念のため提出前に確認をお願いします」
「うん、ありがと。あー、元気出てきた」





一期率いる出陣部隊はわたしがスムージーを飲み干した頃に帰還し、彼らも執務室を訪れたその足で報告を済ませてくれた。

比較的簡単な任務のため、幸い誰も怪我をすることはなくほっと胸を撫で下ろした。
昨日出陣を希望した左文字たちも各々課題に向かってそれなりに意味がある出陣となったという。
平野と厚は密命で左文字らのサポート役として長谷部が選出したため、無事に任務を終え帰還できてよかったとだけ答えた。

「ありがとう。疲れたでしょうからお風呂に・・・いや、もうごはんになるのかな」
「ええ、そのようで。乱、出ておいで」
「さっすがいち兄!おかえりなさいっ」
「足音がしたのです。乱は軽やかに、『走る』とはまた異なる足取りが多い」
「確かによくスキップしてる」
「好き、ぷ・・・?」
「あ、えっと。ととん、ととんって歩くことをスキップって言うよ。あと乱、飲み物の差し入れありがと!すごくおいしかった」

人差し指と中指を足に見立ててスキップをやってみせ、その動きにみんなが納得の表情を見せた。
そしてスムージーのお礼をすると乱は頬を桜色に染めかわいく笑う。

そこにきゅるっと小さな音がし、みんな一瞬はてなマークを浮かべた。
しかしすぐにその音の主であろうものへ視線が集まる中、小夜の小さな手のひらがお腹に移動する。

「・・・・・・」
「小夜、お腹の音までかわいいね」
「オレ鼠の鳴き声かと思ったぜ」
「久しぶりの出陣でしたしお腹空きましたね、小夜さん」
「あ!そうだ、ボクごはんできたから呼びにきたよ!」

小夜自身も予期せぬ出来事だったのか目をまんまるにしている姿が愛くるしくつい構いたくなってしまっていると、乱が夕食を知らせにきてくれたことを思い出したらしく小夜はその大きな声にも驚きびくりと身体震わせた。

乱に急かされ着替えへ向かった第2部隊の背中は実に微笑ましいものであった。
粟田口も左文字もそれぞれ深いかなしみを背負っているなどと今は全く感じられず、せめてこの本丸にいるときだけでもこうあって欲しいと切に願うばかりだった。

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