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昼食後、またひとり執務室でデスクワークを始めた。
膝に掛けたブランケットが落ちたのにも気付かぬくらい集中していて、今剣の元気な声が部屋いっぱいに響いてやっとディスプレイから目を離した。

「わ!おかえりなさい!もうこんな時間か」
「えんれんたのしかったです!」
「主よ、俺も存分に楽しませてもらったぞ」
「それはよかった。おつかれさま。みんな揃ってきてくれたし、今報告してもらっちゃおうかな?ソファーにどうぞ」
「わーい!」

今剣がどこに座ろうかなときょろきょろしているうちに、隊員である貞宗の3振りと岩融は自身から最も近い場所へ腰掛けた。
したがって空いているのは、今日の演練で部隊長を務めたの国広の隣。
今剣はそこへ豪快に座るのだがその際に国広の布を巻き込んでしまい、国広は上体が引っ張られ慌てふためく。
更に布を被った彼の肩にはこんのすけが乗っており、そのこんのすけもソファーに滑り落ちた。


てんやわんやの光景に一同笑いながらも無事報告を終えることができ、16時頃には鍛錬で手入れを必要とする清光の元へ向かった。

執務室まで迎えにきたのは堀川。隣を歩く彼は怪我をしていないが、今回清光以外も怪我をしたそうだ。
とはいえ急ぐ程度ではないし、何より清光が相手に攻撃できた証拠なのだから褒めてあげてくださいと言われた。

「ねえ国広」
「はい何でしょう、ってあれ?主さん兄弟の件で僕のことは堀川って呼ぶんじゃ・・・」
「そうだけど、ふたりきりのときまで徹底しなくてもいいかなって」
「主さんはそういう気遣いがお上手ですよね、ありがとうございます。ああ、それで何でしたっけ」
「あ、肩から腕にかけてジャージ汚れてるけど本当に怪我してないの?」
「ああこれ!これはですね、兼さんに突き飛ばされて運悪くぬかるんだ地面に着いちゃっただけなんです。兼さんはその僕を庇ったせいで怪我しちゃった。さ、着きましたよ!お手入れお願いします、主さんっ」
「主、ごめん。また派手めに怪我しちゃった・・・髪もバッサリ切れちゃったよー!」
「おお、そのようで・・・」
「髪くらいでピーピーうっせえな」

国広、そう口にしかけたが手入れ部屋に到着してしまった。
手入れ部屋は午前中の深刻さと違ってわいわいした雰囲気なものの、明らかに怪我人は増えておりそのギャップに戸惑う。
清光もあちこち怪我をしているけれど本人はもうそれどころではない様子。彼は斬り落とされた一房を大切そうに抱きしめトリートメント頑張ってたのに、と嘆く。

お手入れは基本的にあるべき姿に復元をするものだ。
彼のように切り落としてしまったものを利用しながらの復元は可能なのだろうか?
こんのすけは執務室で代わりに報告書を作ってくれているため、ここにいるものみんなその疑問には答えられそうにない。だからわたしは一か八かの勝負にでる。

「清光、髪ここでしっかり持ってて」
「・・・う、うん」





「終わった・・・」
「おう、おつかれさん」
「世話になった」
「おつかれさまです主さん」
「ありがとうくるみ」
「ありがと主!髪も、元に戻してくれて嬉しい」

清光の他に怪我をしていたのは安定と和泉守だった。
そして堀川の汚れてしまったジャージも元に戻してあげた。
本人は洗濯すれば済むのだからと言っていたけれど、半ば無理やりお手入れしたのだ。

「清光、今回はいいけど任務中こんなことが起こっても拾ってきたりしちゃだめだよ?」
「はーい」

清光は合体に成功した髪を嬉しそうにコンパクトミラーで写し手櫛する。傍らで、確かにやりかねないと頷く新選組の刀たち。
そんな彼らにお風呂入ってきてはどうかと勧め、今朝シャンプーが届いたことを思い出す。

乱が早速設置したと昼食の際に言っていたし、今夜はみんな楽しくバスタイムを過ごしてくれたらいいなと口元が緩んだ。

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