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継承されるまでの間、政府が維持できるのはひと月が限界。それを過ぎてしまえばこの本丸は霊力が尽き消滅する。

政府がそう言われはってから実際に候補者が見つかったと一報が入ったのは2週間経った頃やったでしょうか。
ま、あくまでも候補ってことでそんな期待もしておかない方がよさそうやと自分はいつも通りの生活を送ろー思ってました。

ところが怪我を伴う出陣はあかんからという理由で毎日10振ほど非番が増え、必然的に縁側へ寝転んでいる時間も増え・・・何やかんや考えることも増えた。全然いつも通りやなかったかもしれないです。


自分らの部屋は日当たりが極めて良い。
難点は食事の部屋や風呂などの共用部分から最も離れていることですけど、逆に静かな訳で個人的には好都合思います。

「国行、よくずっと板の間にいられるね」
「若い証拠や」
「嘘。俺ふかふかの布団がいい」


普段は粟田口に混ざって庭を駆け回ったりなんなりしている蛍丸だが、あれ以来ふとしたとき心細いのか共に縁側へいることが多くなった。


継承の前日も蛍丸と縁側におったなあ・・・。

その日も朝からええ天気で、蛍丸が傍らで葉笛を吹いていた。
誰かに貰ったんか、自作したのかどうかは定かではない。
音を奏でる度に目一杯膨らむ頬をついつい見てしまうため本人もその視線が気になったのか、一旦それを口元から離した。

「うるさい?」
「いや?」


自分はいつも寝そべっているのに対し、蛍丸は真逆の行動だった。
刀装を抱えて持ってきてはこれでもかというほどに磨いてみたり、福笑いをしてみたり。
雨が降った翌日だったと思うが、泥団子を作っては乾燥させるだとかで縁側の下に並べて置いてみたりする日もあった。

未使用の刀装なんか磨いてどうするのか訊いたら主さんが遺したもの今度使うときに埃かぶってたら嫌でしょと言う。

福笑いは正月になる度に蔵から登場していたおかめはん。こんな時期に見るのは初めてやった。
しかしひとりじゃつまらなかったのかすぐに片付けに行ってしまった。
・・・声かけてくれたら一度はしゃーないなあ言ってやったるつもりやったんやけどなあ。ちょっとかわいそうなことしたわ。

泥団子に関しては・・・、特に何も訊いとりまへん。けど一昨日下を覗いたときまだ残ってたから、くるみはんが来て3日目なった今もあるんとちゃうかな。
ずらずらー並んどるんで何も知らんで見つけたらそこそこ驚くと思うで。


「明日だね」
「せやな」
「どんな人だろう。国行はどんな主さんだと嬉しい?」
「そりゃこき使わん主はん」
「言うと思った」


けど、自分ら主はんを選ぶことはあり得へんやろ。

考えるだけ無駄や。

刀はいつでも目の前の主はんに従わんと・・・。

それを理解しているはずでも問いかけてきた蛍丸は、はにかみながら更に言葉を紡ぐ。

「国行みたいな主さんだったらどうしようって思ったんだけど、それでもいいな」

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