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「清光、そろそろ起きよっか」
「・・・・・・んー」
「おはよ」

ベッドで身体を揺すると気分が悪くなるといけないので、肩へ優しく触れるだけにして清光を起こす。
粟田口の子たちが来ても目を覚さなかった彼はちょうど1時間の仮眠を取れた。

「清光寝起きよくないのに。今朝は相当早くから起きてたんでしょ」
「・・・主だって、寝起き悪い」
「加州清光、あまり身体を動かさないと夕飯が食えないぞ」
「あれ、長谷部もう間取り終わったの?」
「お前も早く目を覚まして箱を解体しまとめろ」

粟田口の子たちは他のみんなにも気軽に離れへ来ていいことを伝えてきますと30分ほどの滞在で戻って行き、そこにひと仕事終えた長谷部が来て空になったダンボールの山を解体してくれていた。
彼にカッターを渡すとずいぶん手慣れていたので日頃から政府経由で発注した物のダンボール等を処分しているのかもしれない。

「長谷部の服動きやすそう」
「ああ、ジャージと言うそうだ。この本丸にも内番服がジャージのものも多い」
「確かに。長曽祢さんも堀川も赤いの着てた」

解体作業中の長谷部の傍らで清光がしゃがんでダンボールを紐で括っている。そして長谷部のジャージがどうしても気になりズボンをひょいとつまみ、伸縮性に感心していた。

「身軽以外にも洗濯しやすい点も挙げられる」
「そっかー。この袴も可愛いし主に似合ってるって言ってもらえたし、安定とおそろいっていうのも気に入ってるけど洗濯が大変そうだもんね」

そう言って清光は長谷部と自らの服を交互に見る。
同じ袴は新品もあるので洗い替えは困らないが、わたしにもお手入れの仕方がよくわからない。特にプリーツの維持はアイロンが使えるのだろうか?そもそもアイロンが存在するのかも把握できていないのだが・・・。

「汚れていたりみっともないようであれば歌仙や燭台切あたりが黙っていない。洗わせろと世話を焼いてくるので彼らの気が済むままに任せてしまえばいいだろう」
「へえー、本当にいろんなやつがいるんだね」



全ての荷ほどきが終わった頃、ちょうど今剣が離れまで呼びに来てくれた。
新規の本丸だと思い込んでいてしばらくは自分が主体で食事を作って行かねばと気を引き締めていたが、まさか食事ができる度に呼ばれるなんて。

「あるじさまがいいにおいだと、ほんまるじゅうでうわさになっています」
「そ、そんなの広まらなくても・・・」
「でもかしゅうさんもいいにおいですね!」
「ありがと、主と同じシャンプーなんだー」

今日は本丸中の廊下を雑巾掛けしたという今剣は日が暮れても元気いっぱいに話す。
しかしよく見ると彼の額が少しばかり赤く、これはどうしたのかと尋ねれば雑巾掛けに夢中で何かにぶつかったらしい。何かとは柱だろうか?
極めて色素の薄い髪を避けそっと撫でると、あるじさまのおちからが流れてきます!と言われ驚いた。

「ちから?」
「俺も何回かあるよ、昨日ハンドクリーム塗ってもらってたときも。もしかして無意識?」
「ふれたぶぶんがあたたかくなります」
「それは、単に体温じゃないの?」
「えーどうだろ、こんのすけにでも聞いてみた方がいいかもよ」
「こんのすけはなきぎつねのおともとなかよくしていましたよ!」 

こんのすけは個人の部屋をまわってくると言っていたが、今剣曰く鳴狐のところに長いこと居たそうだ。狐同士すぐ仲良くなれるかもしれない。

「おー来たか嬢ちゃん」
「荷ほどきお疲れさん!今宵の食事担当がアタシ達ってことはこりゃ呑むしかないでしょ」
「伊達のもの達ほど手の込んだ物は作れませんが貴方を想ってお作りしました」

既にお酒が入っているような日本号と次郎太刀、そして唐揚げが山積みになった大きな器を軽々と持つ太郎太刀。
今夜は彼ら主催の立食パーティーだそうで広間にはいくつもの大皿が並び、そこに面した庭先では直焼きができるようにセッティングされている。

「あなたたちらしいね、ありがと」

主はいける口?と次郎太刀に問われたのでそれなりにと答えると、早速ぐい呑みを手渡された。
問答無用で持たされた清光はわたしが呑めるのかを心配しているけれど、わたしだって成人である。それにみんながこういう場を設けてくれるのはありがたいことだ。

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