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5月の大型連休後に発行した週間新聞が、私の記事が初めて載った新聞である。最初なんてもう緊張もいいところ。今まで大好評だった、私も楽しみにしていた新聞の3分の1を任されたのだ。いくら先輩方の補助ありとはいえ、ど素人の私が並中の人達に受け入れてもらえるのか不安だった。

1週間もすればまた新しい記事を載せなければ行けないので、そればかりに気をやるということではなかったが、やはりメディア業界で最も大切にしたいのは評判。発刊当日は気が気でなかった。でも評判は予想を上回り人気の絶頂を極め、その日の放課後には意見箱へのファンレターが溢れんばかりに。新たな発刊に向けて落ち着く間もなく次の新聞記事作成に追われた。まあ先輩曰く、年度始めの新聞はいつもこうらしく、新聞部の新入生の通過儀礼だとか。そうか、そうだったのか、私は知らないうちに大人の階段を上ったよ母上。


「ちょっと名前今日のスクープ!」

「…1-A男子生徒のトランクス告白事件のこと?」

「ぐっ…知ってたのか…さすが新聞部…」

「並中新聞部はマスメディアでありながらパパラッチ、つまり最強のマスコミ」
「全部同じ意味じゃないの?」

「厳密にはちょっと違うよさだこ」

「だからさだこじゃねえ!」

「もう呼び方は諦めて。さだこはさだこ、それ以上でも以下でもない。因みにその事件はバッチリ男子の先輩が目撃&激写」

「新聞部侮れねえ…」


最初の発刊から早一ヶ月。ようやく自分が書く文章に目が慣れ、聞くところによるとファンがいるらしい、部活に必死だけじゃなくて楽しめてきた頃。今日は朝から事件らしい。並中で平和な日常を送ることの方が困難を極めるが、登校中から事件発生なのは初めてだ。

さだこは私が発刊3回目を迎えた辺りで堂々と賄賂を持ちかけた仲である。まだ出会って2ヶ月だが、彼女は私の心から信頼できる友だ。彼女も同じらしいので感極まりない。




「昼休みに決闘があると女子の先輩が情報入手したらしい…あ、先輩と同じクラスの持田先輩vs今朝の事件の核心沢田くんらしい」

「あー隣のクラスの。決闘楽しそう、見に行こうよ」

「現場はその女子の先輩が担当するって言ってるから、私はいいや」

「バスケ先輩、だっけ?ホント新聞部のネーミングセンスどうなってんの」

「男子の先輩はサッカー先輩だよ」

「名前は?」

「…バスケ先輩はなわとびちゃん、サッカー先輩は、ば…バドミって」

「バドミ!!うけるなにそれ!あたしもそう呼ぼ!」

「やめてくれ!」

「じゃあさだこって呼ぶな!」

「却下!」

「じゃあ却下!ざまあみろバドミ」

「トイレに籠れさだこ」

「それはなこ!」


昼休みに中継してくれたバスケ先輩によると、並中のアイドル笹川さんを賭けた決闘は、沢田くんが勝ったらしい。都内でも強豪剣道部の主将から髪の毛をむしって勝利って…どこの小学生の喧嘩だ。

っていうか今週号、もしかして沢田くん特集になるんじゃないの?ってことは私は別の記事用意しないと…いや、あえて沢田くんブームに乗るべきなのか…どうしよう。先輩方に相談せねば。
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