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ag/吉田松陽2

※大捏造※
《長編連載》尊皇攘夷派である松陽が30歳で処刑される死ネタ前提。


【寺子屋時代】
名前25歳、松陽28歳、銀時13歳

銀時が拾われて1年ほど。名前の正体は明かさず、平穏な時が流れる。高杉、桂、坂田トリオと先生に加えて、名前との寺子屋での絡み。

高杉は名前を本気で苦手というか嫌悪しているが、理由は本人も分かってない。
「なんか、先生と一緒にいるところ見るとイライラする」
「晋助くん…ごめんね、こればかりは…」
「名前で呼ぶなよ、馴れ合いたくない」
「…ごめんね。(この子は…じきに私の正体に気づくかもしれない)」
「(なんでこの人が嫌なんだろう…わかんねえな)」

桂は明らかに雰囲気が浮いてる名前が不思議。
「なんか別世界な感じがします」
「そうかな…小太郎くんも中々不思議な考え持ってるよね」
「先生の前ではいい子にしていたいから」
「ん…?文の脈絡…?」
「(名前先生って、雰囲気が違う世界の人みたいだな)」

銀時はようやく母的な感じで認めてきた。
「名前、先生がお風呂沸かしたって」
「わあ…申し訳ない…ご飯頑張って作ろう!」
「…前に比べて包丁だいぶうまくなったな」
「ふふ、やっと慣れてきたからね」
「うちのかーちゃんは料理が苦手だなー」
「…!銀時くんもっとお母さんって言っていいよ!」
「もう言わねー…」


【攘夷戦争勃発】
名前26歳、松陽29歳、銀時14歳

ちょうどその日も月が綺麗な夜だった。先生と名前と季節はずれの月見をしようということで、俺一人で団子を作ってた。先生は飾る花でも摘んできましょう、と言って出て行ったばっかりだし、名前は納戸から掛け軸を取ってくるだなんだで今この台所にいない。

今日先生は月見のために稽古を早く終わらせてくれたけど、もう月見なんてとっくに終わっていた時期だから先生も休みたい時があるんだな、程度に思った。最近は近辺に人が増えたのをよく見かけるから、月見もキンジョヅキアイとかそういうもんだと、その日も思ってたんだ。そう思っていればほら、戸を叩く音がする。たまには家族水入らずで、先生と名前を独占してもいいだろうが。

「なんだ?ガキが一人か?」
「もう場所が割れてるんだ、吉田松陽はどこだ」
「…先生を…え…?」
「しらばっくれても無駄だ。宮様の身は確保した。咎人をよこせ」
「な、何の話だよ…宮って誰だよ…?」

戸を開けると黒い服来たおっさん達がいて、どうやら先生を探してる。ミヤサマって誰だ、うちにそんなやついない。トガヒトってなんだよ、そもそもこいつら誰だよ。何もわかんねえよ…!

「その、先生は今、外に出てて」
「案内してもらおう」
「多分近場だし、どこにいるか本当に知らないんで」
「ッチ、鈍いぞ!外に出ろガキ!!」
「っ…多分、あっちの…」

「出ちゃだめ、銀時!!」

外から叫び声が聞こえた。名前の声だ。俺を呼び捨てにするほど切羽詰っているみたいで、そんな分析ができるほど自分が冷静に思えたけど、実際はパニックで頭は真っ白だった。呼び止められたもののそれは既に遅くて、外に出て目に入ったものは、おっさん達に捕らえられていた名前だったから。

「名前…?」
「宮様を呼び捨てにするとは…なんたる罪!このガキも捕らえろ!!」
「うわっ…!やめろ、放せ!」
「その子を放しなさい無礼者!!その子も松陽さんも関係ありません!」
「しかし、こいつらは謀反であります!」
「父様を陥れて開国を企む貴方達が何を言いますか!!」

両腕を後ろで縛られ、棒やこぶしで殴られながら、ぼんやりと名前とおっさん達の話を聴いていた。名前はてんのーって人の娘で、国の姫様で、あまんとと結婚するところから逃げて先生のところに来たらしい。先生は姫、宮様と呼ぶらしい、を攫ったことになる罪で捕まるらしい。

「最近偵察のためにうろついていたのは貴方達なのでしょう!」
「全ては宮様、いえ貴女の父君、仁仁天皇閣下のため」
「開国に染まり幕府につく裏切り者め…!」
「なんとでもどうぞ、いずれ貴女は用済みになるのだから」
「頭!この家の座敷から、攘夷を洗脳する書物が!」
「ふっ…攫いだけでなく古臭い攘夷を押し付ける罪をも増やすか…なんとしてでも吉田松陽を捕らえろ!」

そんな時にふらりと先生が帰ってきて、そしてあっさりと捕まってしまった。あっという間に家に火が放たれ、嫌がる名前が無理矢理牛車に乗せられて、先生も連れていかれるのを呆然と見ることしかできなかった。

後のことは頼みましたよ…って、先生がいてくれれば俺に頼まなくたっていいだろ…?皆を護ってあげてくださいねって、もうこの家に帰る事すらできなくて、先生も名前もいなくなったら、俺は誰を護ったらいいんだよ。護るための剣を教えてくれたんだろ、俺、護ることすらできなくて、そんな俺に頼むってどういうことだよ。教えてくれよ、先生。


それから俺は捕らえられた先生を救うために、寺子屋に集った面子で天人相手に喧嘩をふっかけに行った。途中で出逢う同志と共に無我夢中で剣を振るった。増えたはずの仲間は紅く染まり動かなくなっていく。屋根の上で語り明かした”将来”なんて、あの二人を抜かしては考えられなかった。先生は救うことができても、もう名前は手が届かない雲の上の存在になったのだ。元々そうだったはずなのに、あいつが寺子屋に馴染みすぎてるのが悪いんだ。こんな幻想を抱かせやがって、どう責任とってくれんだよ。責任とって戻って来いよ、先生と一緒に。

名前を知るやつらにはあの夜のことを話した。高杉は「やっぱりあの女、嫌いだ」と言っていた。こいつは名前のことを嫌っていたのはなんとなく知っていたが、なぜそうなのかは知らないし知りたくもねーけど、正直そこまで言うほどとは思ってなかった。でも高杉の呟いた「先生が囚われたのはあの女のせいだ」という言葉は頭にこびりついて取れなかった。ヅラは「庶民じゃないと思っていたが、まさか俺達の目標である方の娘だったとは…」なんて、難しいこと言ってんじゃねえよ。名前はただの名前で、俺の、俺達のかーちゃんだろうが。

あの時に見た月と同じはずなのに、今の血塗れた枷が掛かったそれは、ただ俺に苦しみしか与えない。先生も、名前も、一段と遠く感じた。俺はあの人たちの背中を追ってばかりだ。
2章完→3章に続く(仮)
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