(原作寄り)
(いつもの原作寄りより糖度高いです)
(年下カレシと年上カノジョ←)




「なに拗ねてんだ」
「別に」


船長室に戻ってくると、ベッドの上に鎮座している赤い塊。
そういやしばらく見ていなかったっけと思って、後ろから抱きついた。
うん、本日も触り心地は最高。しばらく無言で堪能していたが、いつもなら返ってくる筈の持ち主の声が聞こえない。
なあとかおいとか呼びかけてみても反応なし。まさか寝てるんじゃないだろうなと思って確認するも、俺が起きてるのと同じくらいばっちり目は覚めてるようだった。

ただ、顔がものすごく不機嫌そうだったんだけど。


「俺がわざわざ聞いてやってんのにそういう言い方するわけ?」
「うるせー」


膝の上に肩肘をついて、俺の恋人はご機嫌斜めだ。
眉間の皺もいつもより深いし、目がほそまっていつもより顔が怖い。
でも、ちょっと突き出た唇と、少し膨らんだ頬は子どもっぽくて可愛らしいと思うのは俺だけだろうか。まあ実際俺のほうがいくつか年上なのだけれど。


さてどうするか。
このまま放っておいてもいいが、それでは収まらないだろう。苛立ち紛れに喧嘩を吹っかけられてもつまらない。
こいつが拗ねてるときは大抵俺のせいらしいから、原因を頭の中で列挙してみた。


ありすぎてわかんねえな。
あれか、最近のことで言うと、キラー屋にこいつがチビのころの写真もらったことか。
でもアレはばれてねえはずなんだけどな……。
チビのころのユースタス屋は、女の子みたいに可愛らしかった。髪の毛も逆立ってないし、まだ眉毛もあったしな。


「……お前、心当たりねえの?」


写真のことを考えてたら、しびれの切れたらしいユースタス屋から声がかかる。
うん、気付いてほしいんだなってのは分かるけど、まだ俺は答えにたどり着かない。
仕方ないから適当なことを言ってみた。


「昨日麦わら屋の船に泊まったこと?」


ぴくり。
ユースタス屋のない眉が跳ね上がる。


「はあ!?なんだよそれ!聞いてねえぞ!!」
「言ってねえもん」
「なんで俺もさそわねーんだよ!」


あ、やべ、かわいい。
仲間はずれにされたって思ってんのかな。やきもち妬かないで、遊びに誘ってもらえなかったって思うこいつはほんとに可愛い。
手が動いてユースタス屋の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。撫でるなとか言ってるけど、振り払わないのはこうされんのが満更でもないからって知ってる。
ふふ、いいこいいこ。
ふわんとした赤い髪を撫でながら、コートで隠された背中にぎゅうっと抱きつく。


「なあ、教えて?お前のご機嫌斜めなワケ」
「……お前が最近、ほったらかしにするからだろ」


ああ、最近構ってやってなかったからな。船に行ってもすれ違ったり、お互い船長だから何かと忙しかったりして。
寂しかった?と問えば、そんなんじゃねーだなんて。
寂しかった、つまんなかったって、顔に書いてあるのに。


「じゃあ、今日はお前んとこにお泊りする」
「……は」
「お前の船行って、一緒にメシ食って、風呂入って、いちゃいちゃして、一緒に寝る」
「おま、急になに言って…!」
「いいだろ?ダメか?」
「や、ダメ、じゃねえ、けど…」


赤く染まった頬に口付けると、ぱっとこちらを振り向かれた。丸く見開かれた目。やっとこっち向いたな。
恋人一人抱いたことがないわけじゃないだろうに、どうしてこいつの反応はこうも初々しいんだろう。一緒にいる俺までどきどき緊張が伝染ってしまう。


「じゃ、決定な?」
「……おう」


振り返ったユースタス屋に抱きしめられる。あたたかで逞しい腕のなか。
柔らかくもなんともないけれど、最近のお気に入りはここ、この場所。
身体に伝わる心臓の音は少し早くて。
せっかく取り結んだご機嫌がまた急降下しないように、俺からも腕を回してしっかりと抱きしめた。




My Sweet Heart




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