トラファルガーの左手を取って、小指にリングをそっと嵌めた。
給料三か月分、というわけではないが、俺のお気に入りのブランドの指輪。
シルバーに炎の紋様が描かれていて、大抵はブラックなのに、その色がクリムゾン・レーキだったから。
思わず買ってしまった。
「俺、こういうのあんましねえんだけど」
「知ってる。いいだろ。俺が好きでやったんだから」
「趣味悪ぃの」
可愛くないことを言いながらも、うれしそうにしてるのが分かる。
手を裏返したり右手で触ったり。何より外さないあたりよろこんでくれたのだろう。
そういや、こうやって何かプレゼントするのは初めてかもしれない。
「なんで小指なんだ?」
「ああ。普通は薬指だよな。なんか、赤い糸みたいな感じでいいなって思ったから小指にした」
「赤い糸って……お前、たまにそういう乙女チックなこと言うよな」
「左手の薬指選ぶ方が乙女チックな気がするけどな」
「どっちもそんなに変わんねえだろ」
赤い糸。
クリムゾン・レーキを見たときにふっと思っただけだけど、あながち間違いではないかも。
それでもってローを独り占めしたい。解けないようにぐるぐる絡めてそばにおいて。
指輪なんてすぐに外してしまえるし、実際の強制力はまったくないけれど、それをこいつがしてるときは、俺のだって印になるから。
もう全部俺のだけれど、もっと近くに寄りたい。
一つになるよりも、限りなく一つに近い二人でいたい。
ささやかな独占欲の印。
左手を大事そうに右手で包んで、小さな声でありがとうと言ってくれたトラファルガーを抱きしめる。
「これで俺だけのローだよな」
返事の代わりに背中に腕が回ってぎゅうと抱きつかれた。
それで十分だ。
お題10:赤い糸
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