(「誓いの言葉なんかなくても」の続きです)




携帯の振動する音が耳元で響いた。携帯からの光がまぶたの裏を刺激する。
まだ目覚ましのなるような時間じゃないはずだ。
普通なら放っておく。こんな時間に来るメールやら電話なんてろくなもんじゃねえ。
でも、うっすら開けた目に飛び込んできた着信主の名前に、急速に脳が覚醒する。
今日は仲間の家に何人かで泊まっているから、さすがにここで通話するのはまずい。
床で雑魚寝しているツレをまたいでマンションの廊下へ。
すぐ傍が国道だから夜中もうるさくて、少しくらい喋っていても近所迷惑にはならないだろう。
壁にもたれかかって通話ボタンを押した。


「もしもし」
「……ユースタス屋?」


遠慮がちにトラファルガーの声が聞こえた。
抑え目の声で返事をしてやれば、今いいのかと心配そうに言うもんだから、大丈夫だと言って先を促す。


「なに、どうした?」
「べつに。なんでもないけど」
「ふうん。いいこにしてるか?」
「ガキ扱いすんな。結婚式、どうだった?」


こんな時間にかけてきてなんでもないはないだろ。でも、無理に聞いても絶対言わないのは分かっていたから、聞かないことにする。
今日の結婚式の話、その後の馬鹿騒ぎの話をしてやる。
そうしていると、トラファルガーの相槌がだんだん眠たげなものに変わっていって。大概もういい時間だ。
明日も大学があるのだろうし、あまり夜更かしさせるのもよくない気がする。


「眠いだろ?それじゃあ…」
「眠くない。もう切るのか?」
「いや……」
「じゃあまだいいだろ。それからどうした?」


促されるまま話を続ける。が、しばらくすると電話の向こうから眠たげな雰囲気が伝わってきて。
こいつ、寝落ちるまで続ける気か。


「眠かったら寝ろよ」
「ねむくない……。ユースタス屋」
「おう」
「…ゆーすたす、や」
「おー」
「…………」
「…………」
「あいたい、な」
「……俺も」
「お前も?」
「うん」
「…そっか」
「……」
「……」
「なあ」
「ふぁ…なんだよ?」
「好き?」
「…なにを?」
「俺のこと」
「うん……」
「愛してる?」
「……それは…わかんね」
「分かんねえの?」
「なんていうか…あいしてるっていうか、好き、のほうが、しっくりくる……」
「ふうん」
「あいしてるって、なんか、変だ…」
「じゃあ、大好きってこと?」
「うん……。そっちのが…近い……」
「そうか」
「…………」
「…………」
「ゆーすたす、やぁ」
「うん」
「…、……、…」
「ロー?」
「――――――――――」





「おやすみ」



時刻は午前3時前。
携帯を片手に丸くなって寝ているであろう恋人のことを考えた。
ついさっきまで近くにいたのに、今はこんなにも遠い。







お題9:「好き?」「好き」「愛してる?」

電話の向こう側で




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