学生時代から眠ることが好きだ。昼間、できれば天気のいい日にうつらうつらするのが至福の時。
大学の三階奥の倉庫にあったソファ、あれはよかったな。
ちょくちょく色んなとこでまどろんでいるもんだから、キラーにはネコ扱いされている。
そういやネコってよく寝るから”寝子”って書くんだっけか。違っただろうか。
最近では外で寝ることはなくなったものの、家にいるとついソファの上でうつらうつらすることが多い。大抵昼間、仕事に行く少し前の時間。
選択とか掃除、やることを済ませて特に用事もなければ、ソファに寝転がって目を閉じる。
眠り込んでしまうわけじゃない。眠りに落ちる少し前、くらいの状態でぼんやりと周りの音に耳を傾ける。それが心地いいのだ。
電化製品の音。遠くから聞こえる小学校のチャイム。車の音。鳥の声。
そうやって今日も目を瞑っていると、玄関のドアが開いた。
パタパタと軽い足音。今日は帰ってくるのが早いんだな。
いつもならおかえりくらい言ってやるのに、今日はうつらうつらしているのが気持ちよくて、声をかけるのを止めにした。
何しろもう、思考は半分ほど停止しているから、そこから浮き上がるのは少しめんどくさい。寝たふりではないが、そのままやり過ごすことに決めた。
起きたら構うけど。
「ユースタス屋?」
トラファルガーの声が聞こえる。俺が返事をしないでいると、足音はこちらに向かってきて、傍に気配。
起きた方がいいかと頭の隅で考えていると、不意に手が髪に触れた。
ゆっくりそっと動かされるトラファルガーの手。その感触が気持ちよくて、自然に頭がトラファルガーのほうに傾いた。
細い指が、俺の髪をかき上げて。指先が頬をなでたかと思うと、今までとは違う感触が触れた。
あ。
少ししてから目を開けると、トラファルガーは傍の机に向かって勉強中だった。
さっきしたことなんてなかったように。でもあれは夢じゃない。
そんな都合のいい夢なんて、見ない。
ソファからすべり降りて、背中からトラファルガーを抱きしめた。邪魔すんなとか言ってるけど、案の定顔が少し赤い。
さっきのお返しとばかりに、俺からも薄紅色の頬に口付けておいた。
お題7:寝てるところにこっそりチュ
眠れる猫(タヌキに非ず)
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