雨の日はどうも調子が出ない。
別に具合が悪いってほどでもないんだが、少し憂鬱だ。髪形も上手い具合に決まらないしな。
今日は仕事の出るのが夕方からで、雨の所為もあってかなんとなくだらだらしていた。

ソファでごろ寝している俺の傍では、トラファルガーが熱心に机に向かっている。
明日は小テストがあるんだとか。医学系専攻だから当然といえば当然だが、こいつの大学生活は、俺が過ごしてきたものよりもずっと勉強勉強で。
朝は一限からきちんと授業が詰まってるし、たまに早く帰ってきたかと思えば、俺が帰ってきてからも机に向かっていることもしばしば。
定期的な考査前は、同級生たちと一緒に学校に泊り込んで勉強してる。
そんな生活が6年も続くんだからな。医者ってのもたいしたもんだと思う。

だから、こいつが勉強しているときは極力邪魔しないようにしてるんだが、今日みたいにずっと同じ姿勢で机に向かい続けているのを見ると心配にもなってくる。
俺はそこまで勉強が好きなほうじゃなかったから、試験前だってこんなに机に向かい続けたことなんてなかった。
トラファルガーにとっちゃ慣れてるのかもしれないが、疲れてるのに気付いてないんじゃないかと思う。
昨日だって夜遅くまで勉強してたしな。

時計を見ると、俺が家を出るまであと1時間強。一時間くらいならいいだろと、勝手に結論を出してトラファルガーの気をひく。
ヘッドホンのコードを数回引っ張れば、やっとこさこちらを振り向いた。


「なんだよ。勉強中は邪魔すんなって言っただろ」
「お前、ちょっと目が赤いぞ」
「ああ、集中してると瞬きの回数が減るからな。それでじゃないか?」


ぱちぱちと瞬きをして目を擦ろうとするトラファルガーの腕をつかんで引き寄せる。そのまま自分の身体の上へ誘導する。
抗議の声が上がるが、ロー、と低く声を出すと、おとなしくされるがままになった。
仰向けに寝転がった自分の腹の上あたりに落ち着かせて、両手をゆるく握る。


「ちょっと休憩な」
「お前はさっきからずっと休憩してるだろ」
「俺じゃねえよ。お前だ」


上体を起こして、トラファルガーの目元に口付けをひとつ。
そのまま抱き寄せてまた寝転べば、トラファルガーがもぞもぞと動いて、頭を胸の上に預けてきた。


「せんせー、俺の心臓はちゃんと動いてますか?」
「残念なことに正常だな」


くすくす笑う声が胸元から聞こえる。
残念ってなんだよと、軽く頭を小突いてやると、今度は笑い声に混じって声が聞こえた。


「ユースタス屋の身体は丈夫で健康です。向こう10年は大丈夫でしょう。でもオッサンだから腹が出てこないように注意してください」


オッサンは余計だ馬鹿。仕返しに痩せた身体を力いっぱい、苦しいくらいに抱きしめる。
くすくす笑いは止まらない。
雨の音を聞きながらこうしてたら、一時間なんてすぐにたつだろ。
俺の憂鬱が吹き飛んで、こいつの疲れが軽くなればいいなんて。そう思いながら。




お題3:寝ころぶ上に身体を乗せて

憩すれば?




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