誰かに呼ばれてる、気がする。誰だ、俺のことを起こそうとするのは。
「…屋!ユースタス屋!起きろ!」
ゆさゆさと肩をつかんで揺さぶられて、意識が少し浮き上がる。
開けたくもない瞼をようよう開いてみると、藍色の瞳がこちらを見ていた。
「とら、ふぁるがー?」
「まだ寝てんのか馬鹿」
ああ、そうだった。昨日から二人で寝ることにしたんだっけか。誰かと一緒に寝るだなんて久しぶりで、なんだか新鮮だ。
とりあえず状況を確認した俺の意識は、再び緩やかに沈んでいく。
当たり前だ。俺が起きるのはいつも10時って決まってる。
「こら、寝るな!もう起きるぞ!」
「まだ起きねぇよ……」
「お前はな!俺は大学行くんだよ!」
さっさと離せと暴れるもんだから、落ちかけてた意識がまた浮上する。
そういや、こいつはまだ大学生だった。別々に寝てたときは、起きたらいなかったが、結構早くに起きてたんだな。
腕の中のぬくぬくを手放すのは惜しかったけれど、遅刻させるわけには行かないから、仕方なく腕の力を緩めた。
「お前まだ眠いんだろ。寝てていいぞ」
「いい。お前が行くまで起きてる。朝飯、作ってくれんだろ?」
ぱっと薄桃に染まる頬が可愛らしい。
ついでなんだからなとか言ってるが、一緒に住むようになってから今まで、俺用の朝飯が用意されてなかったことはない。毎日テーブルの上に置いてあった。
初めて見つけたときはすげえ嬉しかったっけか。
なんか、いいな。こういうの。
着替えを済ませて出ていこうとしてるトラファルガーを捕まえて、唇に触れるだけのキス。
ちゅ、と幼稚な音を立ててすぐに離れる。あ、硬直してら。
「おはようのちゅー」
冗談ぽくささやいてやると、薄桃だった頬が真っ赤に色を変える。
その様子がおもしろくて笑うと、ものすごい勢いで腕の中から逃げられてしまった。
お題1:おはようのチュウ
目覚めれば君が
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