(現パロ)


「 ……、なんでここにいるんだ?」


「誘われて」
「今日は定休日だ」
「ウチも休みだ!」


大学では見ることのないはずの顔が三つ。
ユースタス屋とキラー屋とジュエリー屋。俺の授業が終わるのを待ちかまえていたらしい。
三人ともここの大学の卒業生で、休みが重なったから久しぶりに来てみたとはキラー屋の言葉で。
三人は仲がいい。お互いの店を行き来したりしてるし、たまに3人で出かけたりもしてるらしい。


「あー、懐かしいな!ウチらの時にあったラクガキまだあるぞ!」
「キッドが蹴飛ばしてはがした壁もそのままだな」
「うお、マジかよ。相変わらずボロいままだよなあ。でも便所の手洗いは自動になってたぜ」
「ホントか?無駄なとこに金かけやがってー」


こいつらほんとにいい大人なのかってくらいはしゃぐ三人。三人とも俺より年上だよな?
キラー屋にいたってはユースタス屋より年上だって、前に聞いたはず。なんだけど。
盛り上がる三人を尻目にさっさと食堂に逃げようとすると、ユースタス屋とジュエリー屋に脇をがっちり固められてしまった。

「逃げんなよ。一緒に昼飯食おうぜ?」
「そうそう!キラーの作った特製弁当!」




騒がしく昼食を済ませて、俺は今ユースタス屋と一緒に歩いてる。昼が済んだら帰るのかと思いきや、ユースタス屋は午後の授業を受けると言い出した。
こうなることは三人の間では了解済みだったらしく、もうちょっと遊んでくると言って、後の二人はさっさと学内に消えていった。


「なあ、ほんとに授業に潜りこむのか?」
「いいだろ。どうせあの第一ならバレねえよ。……お前の邪魔しねえし。でもダメってんなら帰る」


そんな風に言われて、そんな目で見られて俺がダメなんて言えるわけがない。
絶対邪魔すんなよと言うと、ありがとなって微笑まれた。
ユースタス屋と一緒に授業を受けるだなんて、なんだか新鮮でどきどきしてくる。

まさかとは思ったけど、ユースタス屋は本気で授業を受けるつもりらしく、教室に着くと真面目くさってペンと紙を取り出した。
俺が驚いてるうちに教授が入ってきて、授業が始まる。
この授業はとにかく板書が多い。もう慣れたが、最初は書き漏らしのないようにするだけで精一杯だった。
始まってしばらくしてユースタス屋の方をちらりと見ると、癖の強い大きめの文字が、紙の半分ほどを埋めていた。
珍しく真剣な顔。その証拠に眉間に少ししわがよってる。頬杖をついて少し口を曲げて。家ではあまり見せない、その顔。

ふいにユースタス屋がこちらを見て、にやりと笑った。


見惚れてんなよ


と言われた気がして、慌てて目線をルーズリーフにもどした。
それでも俺の顔は赤くなっていたと思うけど。

それから残りの時間。こんなに隣を気にしながら授業を受けたのは初めてだった。




「やっぱ授業なんかもかわんねえな」
「お前、よくあの速度についてきてたな」
「ん?ああ。俺も取ってたからな。それで」


お前の時間割見たっつたろ?と言われて頭を撫でられる。やめろって。誰もいねえけど、ここ一応大学なんだから。
手を振り払うと笑われて、今度はカバンの中から紙袋を差し出された。夜までのオヤツらしい。
結局店の定休は昼だけで、今から帰って夜の仕込みなんだとか。俺も次の時間は研究棟に移動しないといけない。
それじゃあと言おうとすると、すばやく身を引き寄せられて耳元でポツリと呟かれた。


「なんか、お前と一緒に学生やってるみたいで、ちょっとうれしかった」


遅くなるなよと言い残して去っていくユースタス屋の背中を見ながら、俺も同じことを考えていた。
(でも、同級生だったらあんなにどきどきはしないかもな……)




いつもどおり5




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