(現パロ)


”店の残りもんだけど、あっためて食うように”


テーブルの上に小さなメモと、皿に入ったカレーのようなもの。
メモを手の中でくしゃりと握りつぶして、皿を脇に寄せてビニール袋をテーブルの上に置く。
カップラーメンにスナック菓子、着色料の入ってそうな炭酸飲料のペットボトル。

スナック菓子の袋をばりっと開けて、一口二口。
あいつと一緒にいたらほとんど食べないこれは、それほど好きってわけでもない。
塩味に喉が渇いて、ジュースをぐいと一口。そうしていると、冷蔵庫に貼ってあるタイマーが鳴って、ラーメンの出来上がり。
こってりとしたそれを咀嚼する。ああ、この味久しぶり。
好きなわけじゃないけど。

好きでもないもん食ってるのはむしゃくしゃしてるから。
いや、むしゃくしゃしてる自分に腹が立ってるから。
その原因は、もちろんのこと


ユースタス屋だ。




花見の季節はかき入れ時で、ソワレのティータイムも人が多い。
それでなくても今年は雑誌で紹介されたりなんかしてたから、去年よりも人が多いらしい。それも女の客が。
料理もいいけど、来てる客でユースタス屋目当ての客だって少なくはない、と思う。これは贔屓目じゃなくて、ほんとに。
じゃなかったらあんなにレジのとこで話したりしないだろ?それに笑ったりするのは見てて、イライラする。
分かってるけどイライラする。
なんて心の狭い俺。




課題を済ませて調べ物をして。いつもどおり勉強していると、時計の針はすぐに進む。
あいつはいつも帰りが遅いから、こうやって一人で過ごすことなんてなんでもない。
さっきまでのイライラも少し収まったけど、今日はなんとなく顔を合わせたくなくて、早めにベッドにもぐりこんだ。
しんとした部屋で、周りの音がいつもより大きく聞こえる。
さっさと寝てしまえればいいのに、眠気はちっともやってこない。このままじゃあ。


きた。


ガチャガチャと鍵を開ける音。一つの溜息と、ヘルメットを置く音。リビングのドアが開いて、それからこっちの部屋も。
息を殺した俺の横をユースタス屋が通る。またドアが閉まった。
寝返りを打って、ドアとは反対の方をむく。出来るだけベッドの端によって、しっかりと目を瞑る。
会いたいけど、会いたくない。
こんな子供っぽい自分は、嫌なんだ。
それでもどこかで待ってる。あの声が呼んでくれるのを。



「ロー」
「ロー」
「ローぉ」

「起きろ、このタヌキ」
「タヌキじゃねえよ!」


不意に耳元でささやかれてとっさに跳ね起きる。目の前にはしてやったりな顔のユースタス屋。
抱きしめられてただいまと言われれば、おかえりと返してしまうのはもう条件反射みたいなもの。


「なあ、怒ってんの?」
「……怒ってねえ」
「常連さんとしゃべってたのは悪かったって」
「んなの気にしてねえし」
「お前がすぐ帰ったの、寂しかったな」
「…うそつけ」


嘘じゃねえってと言いながら擦り寄ってくるこいつを俺は拒めない。
俺より年上の癖に、そうやって甘えるのが得意だ。いや、年上だから、か?
顔を上げて頭を撫でてやると、額に鼻先に頬に唇が押し当てられる。
カレーは明日半分な、といわれて最後に唇にキス。これはおやすみってこと。
いつもこうやって絆されてるのは、俺がどうしようもなくこいつのこと好きだから。


イライラすんのも好きだからなんだけど、なんてどうしようもない俺。



いつもどおり4




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