冷え冷えとした部屋。クーラーの設定温度は20度。外は熱帯夜真っ最中だというのに、
ひんやりした風が頬をなでていく。
それなのに、なんでこうも冷や汗が出ているかというと、それは俺の上に乗っかっている
変態のせいだったりするわけで。
「なあ、ユースタス屋」
そのにやけヅラが気にくわねー。
いつもだったら押し倒された時点で即行一発殴ってやるとこだが、今日はちょっと油断した。
いつもまっすぐ帰ってくるトラファルガーが、珍しく遅くなるって連絡を入れてきて、
いつもより遅い深夜3時にヤツは帰ってきた。
しかも、かなり酔っ払って、だ。
こいつの酔い方は正確に似て性質が悪ぃ。
顔が赤くなったり酔いつぶれるならともかく、どこまでいっても顔色は変わらなくて、いつもより
シャキッとしだすのだ。
扉を開けてもいつもみたいに抱きついてくるなんてことはなく、よけい悪いことに俺にお帰りを
言う隙も与えず、無言で俺のこと抱きかかえてベッドの上に直行した。
これだから酔っ払いってヤツは!
でも、そんな酔っ払いの上に変態なトラファルガーの目は結構真剣な色を宿していて。
なんだか落ち着かない気分になる。
「俺を抱くのと俺に抱かれるのとどっちがいい?」
選べよと俺にささやくトラファルガーの声は濡れていて。
動けないでいたらやつの顔がどんどん近づいてきて。
唇が触れそうな距離で頬を優しくなでられた。
どういう乗っかり方をしてんのか、身体はちっとも動きやしねえ。
「抱いてもいい?」
深海の瞳に俺が写っているのがわかる。柄にもなくあせっている俺が。
頭ん中でやばいとは分かっていたし、自分の心音が異常に早くなってることに気づいてもいたが、それでもなぜか、俺は動けなかった。
重なり合うまであとすこし。
(……ここまできといて寝オチかよ)
選べ
家主から同居人たちへ17の命令
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