すこしずつ、混じりあう


(未来パロ(?))



相変わらず俺たちは、一緒に暮らしている。
ユースタス屋の癖は直ることなく、未だにうまくはめられない釦をはめるのは俺の役目。最近じゃあ、前を開けっ放しでひらひらしてるとか、寝間着用に買ってやった長袖のTシャツをずっと着ていたりして。


「おい、袖ひっぱんな。伸びちまってんだろ」
「ひっぱってねーよ」
「嘘つけ。俺が買ってやったときはちゃんと手見えてただろ」
「そうだっけ?」
「お前それで口とかぬぐうからきたねーんだよ…着替えて来い」
「うるせえよ」


ふいっとユースタス屋がそっぽを向く。最近やるようになったこと。言うことを聞かない。
そりゃまあお互いもういい年した大人なんだから、いちいち言われたことに従ったりしないのは分かってる。でも少し癪に障るから。こちらに背中を向けて出て行こうとしてたユースタス屋に勢いよくしがみつく。ユースタス屋がびっくりしてる間に、Tシャツを引っぺがしてそこらに放った。裸の背中に頬を寄せる。あれだけ海で泳いでるのに、まったく色が変わらない。
初めて会ったときと同じ、白い肌。


「おい、はなせ」
「いやだね」
「うっとおしいんだよ」
「そういう言葉は傷つくな」
「嘘つけ」


ユースタス屋が俺の手を引き剥がしてこちらを見る。いや、睨んだというべきか。俺はまったく意に介さずに反対の手で白い身体に触れた。きれいに筋肉のついた身体。白い皮膚の一枚下には赤い血液が音を立てて流れているはずで。規則正しく打つ心臓の鼓動が、俺の指に微かに伝わった。


「さわんな」
「アレもだめ、これもだめ。反抗期か?ユースタス屋」
「バカかお前」
「いいからこの前買ってやったシャツ着て来い」


ぐっと顔を近づけて言ってやると、ユースタス屋がしぶしぶといった顔で奥の部屋に消えた。少しマジな顔をすると、まだ言うことを聞く。そりゃあ、ユースタス屋は『ユースタス屋』になってからまだ一ヶ月ちょっと。どう見たって分は俺の方にある。

たっぷり半時間はかかっただろうか。不機嫌そうに戻ってきたユースタス屋は、それでもソファに座っていた俺の隣に座る。一応は留められた釦。恐らく俺に手を出させまいと部屋で格闘したんだろう。新しいシャツは少ししわになっていた。でも俺は、これで文句ないだろうと言わんばかりのユースタス屋の手をとる。


「忘れてるぞ」


殊更ゆっくりとカフスの釦を留めてやる。袖は捲り上げるからいいとか言う言葉は聞こえなかったことにして。ついでに手首の骨を確かめるようにぐりぐりとなぞる。
ユースタス屋の腕はびくりと震えたけど、振り払われはしなかった。調子に乗って、そのまま指を絡めた。ぎゅっと握ると、少しためらってから握り返してくれる。
その様子に満足した俺は、もう片方の手でユースタス屋を抱き寄せた。ユースタス屋が俺に覆いかぶさるような体勢になって、ちょっと苦しいけど気にしない。
手は繋いだまま頭の上に。


「苦しくないか?」
「いや、別に」


ユースタス屋が少し身じろいで、苦しいのが少し楽になる。シャツの襟元に鼻先を寄せて、そっと匂いをかぐと清潔な匂いがした。ぎゅうと抱きついてユースタス屋の匂いを求める。
あたたかくて、好きなニオイ。


「ユースタス屋ぁ」
「……んだよ」


セックスしよう。
舌先まで出かかった言葉を飲み込んだ。本当は言ってしまいたい。
したいんだよ、すごく。


「なんでもねえ」


でも、受け入れてくれなかったらって、不安になるんだ。








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