(現パロ)


今年もこの季節がやってきた。
一年前に押入れにしまいこんだコタツ用布団をベランダに干して、もうそんな時期かと
一人しみじみする。
俺の家にあるコタツは学生時代から使っているものだから相当古い。
近頃はめいっぱい上げても生ぬるい温度にしかならないから、そろそろ換え時かとも思っているが、長年使ったものには愛着もわいていて。
せめて布団だけでも新しくしようと言って、トラファルガーとこの布団を買いに行った
のが去年の冬。


あいつをこの家に引っぱり込んでからもう一年。


今日は試験の終わりだから、早く帰ってくるはずのアイツのために台所に立つ。
とは言ってもたいしたもんはできやしねえ。
キラーに切ってもらったパンに、店からくすねてきた野菜と肉に目玉焼き
――唯一俺のできる料理らしい料理だ― をはさんでサンドイッチを作った。
コーヒーメーカーを稼動させてから、布団を取り込んでコタツを完成させる。

あと少し。トラファルガーが帰ってくる。

コーヒーメーカーの立てる音に混じって玄関のドアが開く音。
コップを二つ用意して、玄関へアイツを迎えにいく。


「あれ、どうしたんだ?ユースタス屋。今日は店じゃなかったのか?」
「キラーの買出しがあるから今日は臨時休業だってよ」


驚いた顔のトラファルガーをぎゅっと抱き寄せる。
外気をまとっていて冷たい。触れた頬もひやりとしていた。

久しぶりの、身体。

試験があるときトラファルガーはたいてい大学で寝泊りするから、一週間ほど会えない日が続く。
一年前まではコイツがいなくても何も不自由ない生活だったのに、今じゃたった一週間いないだけでもなんだか調子が狂うなんて、俺も日和ったなと思う。
着替えて来いよとトラファルガーを促して、出来上がっていたコーヒーをコップに注ぐ。

俺のはミルク入り。アイツのはブラックで。


「なんだ、もうコタツ出したのか?」
「もう、じゃねーよ。遅いくらいだろ。最近寒みぃんだよ」
「ユースタス屋は寒がりだからなあ」


にやにやしながらコタツに入るトラファルガーの前にサンドイッチの皿とコーヒーを置く。
うーわ、ユースタス屋の手作りとか、ありえねーと失礼なことをぬかしてやがるトラファルガーをにらみつつ、自分の分のコーヒーを机に置いて俺もコタツに入った。
場所はもちろんトラファルガーの後ろ。自然に抱きかかえる形になる。


「なあ、なんでそこ」
「寒いから」
「どこだっていっしょだろ!てか、動けねえ」
「俺は寒みぃっつったろ。おまえで暖取らせろ」


文句を言うトラファルガーを腕の中に閉じ込めて、肩口に顔をうずめる。
そうすれば、ほらもう静かになった。
この感じ。ここ一週間足りなかったもの。
その存在を確かめるように、回した腕に力を込めると、その身体から力が抜けて、俺に体重がかかる。

最初から無ければどうってことなかったのに、今じゃこんなにも。
やっぱり日和ったな、俺。


コーヒーが具合よく冷めるまで、しばらくこうしていることにした。





いつもどおり3




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