(現パロ)
ユースタス屋、
ユースタス屋、
ゆーすたすやー、
「不公平だ」
「あん?」
仕事に行く前に新聞を読んでるユースタス屋に向かって、俺は指を突きつけた。
今日は俺が休みで、ユースタス屋が出勤。でも遅番だから出かけるのがいつもより遅い。
「俺ばっかり呼んでる気がする」
「なにを?」
「お前のこと」
なんだ、そのまためんどくせえこと言い出しやがったって顔は。
だってなんだか。呼びかけるのも触れるのも誘うのも、ユースタス屋からは中々してくれてない。気がする。
ほら、今だって。新聞を読んでない方の手を握ったのは俺。
握り返してくれてるけど、ユースタス屋からこんな風にしてくれることはない。
「お前がするから俺のする余地がないんだろ」
「じゃあ、俺がしなかったらお前からしてくれんの?」
「さぁ……」
「……名前くらい呼んでくれてもいと思うんですけどね」
「呼んでんだろ」
「呼んでねーよ!『おい』とか『お前さー』とかしか言わねーじゃん!熟年夫婦か俺らは!!」
「あー、なんかそんな感じそんな感じ」
「ユースタス屋あぁぁア!」
だめだ。今は新聞の小説欄に夢中。しかも子供向けのとこ。今月はねこと座敷わらしの話らしい。くそっ。
かといってこれ以上どうすることもできなくて、ユースタス屋の少し荒れた手で遊んでいたら、あっという間に出勤の時間。
ユースタス屋は俺の頭をよしよしと撫でて出かけてしまった。ちくしょう。
俺のほうが年上のはずなのに。ううう。
別に今の状況が嫌なわけじゃない。呼びかけてくれなくたって触れてくれなくったって誘ってくれなくったって、ユースタス屋が俺のこと好いていてくれてるのは分かってるから。
でなければ、こんなにずっと一緒にはいられない。
ユースタス屋の帰りはそう早いほうではない。店はいつも夜までやってるし、今日は飯いらないって言ってたからあのグラサン店長に捉ってるんだろう。
仕方ないから俺もパソコンを開いて仕事をする。そうしていたらすぐに時間は過ぎて。目が疲れたと眼鏡を外して頬杖をついて、それから覚えていない。
「……い、おい」
「んん…?だれだよ…」
「呆けてんじゃねえよ。パソコンつけっぱで寝るなって言ってんだろ」
「ゆーすたすやあああ」
「寝るならベッド行けよ。俺ももう寝るから」
「え、て言うかお前いつ帰ったの?」
「一時間前くらい?」
電源を落として背伸びをする。妙な体勢で居眠っていたらしく、肩が痛い。
ユースタス屋はもう風呂を済ませたらしく、髪は下ろされて黒く塗りつぶされていた爪は本来の色に戻っていた。
「ほら、ロー」
「ん……、え?」
「せっかく誘ってやってんのに、行かねえの?」
にやり、口の端を上げた笑み。ああ、やっぱりだいすきだ。
差し出された手が引っ込められないうちに、俺は急いでユースタス屋に飛びついた。
求愛行動
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