(現パロ)



真っ黒なソファにうつ伏せになって、俺は拗ねている。
明日のユースタス屋とのデートがなくなったから。


「いい加減に機嫌直せよ」
「……あのグラサン野郎……」
「……それ、先輩に言っとくわ」
「おお、今度会ったらただじゃおかねえって言っとけ」


原因はユースタス屋の先輩にして勤め先の店長。明日出勤できないから代わりにユースタス屋が出ることになったらしい。
ユースタス屋の働く店は小さな店で、店長とユースタス屋と見習いが一人。
なのに、店長の腕がいいからとか結構人気で、完全予約制だが毎日予約は埋まってる。
俺に言わせりゃグラサンかけた変人でしかない件のの店長は、そっちの業界ではかなりの有名人で技術力も高いらしい。俺には関係のないことだけれど。


「せっかくプレミアつきの前売り買ったのになー」
「……俺はいいから見に行きゃいいだろ」
「お前のほうが見たがってたんじゃねーか……。ていうか、お前とデートできねえんじゃ行かねえ」
「ガキかてめえは。しょうがねえだろ。あきらめろ」


ちらりと片目を上げて見たユースタス屋の顔は、ちょっと困ったように歪んでいて。
ユースタス屋から見えないようにこっそり笑う。困った顔も好きだから困らせたい。
中々顔を上げない俺の傍にユースタス屋が座りこんで、その手がそっと頭を撫でる。ゆっくりと髪を梳きながら触れてくるあたたかい手のひら。
そうしてもらうのも好きだけど、そうじゃない。もっともっと。


「なあ、もっと」
「もっとって?」
「分かってるくせに」


目だけ上げて薄く笑ってやると、俺の頭を撫でていた手が頬に添えられた。ぐいと上向かされて触れる唇。
くっつけられただけだったそれをべろりと舐めて、俺のほうからも唇を押し付けた。舌を侵入させて、絡ませあって時折きつく吸って。
口の端を唾液が伝っていくけど気にしない。ユースタス屋の赤い髪をぐしゃぐしゃとかきまぜてまだ離れない。もっともっと。


「……っは、もう、いいか?」
「まだだめ」


ソファからずるりと這い下りて、ユースタス屋の上に乗っかる。まだ冬用のカーペットだし、寒くないだろ?



すぐにあったかくなるから


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