(現パロ)
大学からチャリで10分。
俺たちの住んでるマンションからも10分くらいの所に、ユースタス屋の働いてるbarソワレはある。
働いてるのはキラー屋ととユースタス屋とその友達たち。
そんなに大きな店じゃないけど、それなりにはやってて忙しい。
この店は長居する客も多いから、俺がカウンターの隅で勉強しててもなにも言われない。
さすがに試験前とかはうちでやるけど。
ユースタス屋は引き止めたりしないけど、俺が店に閉店までに居るって言うと、嬉しそうな顔をしてくれる。
「おーい、トラファルガー!」
いつもの席に陣取ろうとしたら、奥のソファ席から声をかけられた。
目立つピンクの髪の女がこちらを向いて手を振っている。ジュエリー・ボニーだ。
この近くのアクセサリー屋で働いてて、ユースタス屋たちの同級生らしい。
ソワレによくやって来るので、ユースタス屋を通じて仲良くなった。
「おまえ一人なんだろー!?こっちきて混ざれよ!おねーさんが奢ってやるから!」
どうやら職場の後輩を連れて飲みに来ているらしい。
どうしようかとカウンターにいるユースタス屋をチラッと見ると、行ってくればと言われてしまう。
ジュエリー屋と飲むのも楽しいけど、カウンターで働くユースタス屋のこと見てるのも
好きなんだけどな。
カウンターの中で彼がカクテルを作る手つきは鮮やかで、俺はこっそり見とれている。
リキュールを注ぐ時の伏せられた目や、グラスを持つ指先が色っぽい。
あんな怖い顔した男なのに、そんなこと。
ぐずぐずしていると、ジュエリー屋がやって来て強引にソファに座らされた。
少し前から来ていたらしく、けっこうみんなテンションが高い。
酒やつまみを次々に差し出され、あっという間にその場の雰囲気に乗せられていく。
何回かカウンターにいるユースタス屋に目線をやったら、一回だけ目が合って、ひらひらと手を振られた。
ちぇ、少しくらい妬いてくれたっていいのにな。
午前1時。店の前でユースタス屋を待つ。
真夜中は少し肌寒くて、捲っていたパーカーの袖を下ろす。
そうしていたらふわりと後ろから抱きしめられた。
「お待たせ」
耳元で聞こえる声は少しくすぐったい。
ぎゅっと抱きしめられてから、手を取られて家へと向かう。
夜の通りに人影は俺たちだけ。なのだけれど。
「なあ、手…」
「んん?」
「誰かに見られる」
「夜だから分かんねーよ。嫌か?」
「う……、い、やじゃねぇけど……」
「ならいいだろ。俺は手ぇつなぎたい」
手を握る力が少し強くなる。ユースタス屋はこんな風になんでもないことみたいに俺に触れてくる。
部屋でもいつの間にか隣りにいてくっついてくるし、今みたいに手をつないだり頭をなでたり。うれしいけど少し恥ずかしい。
頬に熱が集まるのが分かって、夜でよかったとこっそり思った。
うちまで歩いて15分。
繋がれてた手はいつの間にか俺の肩に回ってて、それに気づいた俺がユースタス屋の顔を見ると、
「今日はボニーに取られたからな」って冗談めかして告げられる。
ああ、そんな一言でうれしくなってしまう俺は、どうしようもなくユースタス屋のことがすきなんだ。
俺ばっかり好きみたいなのはちょっと悔しいけど。
肩がぶつかり合って少し歩きにくいけど、こうやってる時間が終わってほしくなくて、
ゆっくり歩いてうちまで帰った。
今日もいつもと同じでシアワセでした。
いつもどおり2
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