(世藻さまへ相互記念!)
「カレーが食べたい」
ある朝ユースタス屋がぽつりと口にした。カレー。ユースタス屋の好物のひとつ。
簡単だからよく作るし、失敗しづらいのがいい。
難を言えば、一回作ると2日続けてカレーを食べないといけないことか。
「なんだよ、突然」
「ほら、これ。このカレーすっげえ旨そう」
ユースタス屋が指し示したのは、雑誌の一ページ。簡単!本格派カレーと書いてある。
どれどれと手元にもらって作り方に目を通した。
「ココナッツミルク?これ、カレー粉入れて作るやつか」
「なあ、お前今日帰り早いだろ?作ってくれよ」
「えー。なんかこれめんどくさそうだぞ?玉ねぎも飴色になるまでとか書いてるし」
「いいだろー。なあ、お願い!」
ほんとにこいつカレー好きだよな。なんか週に一回はカレー作ってる気がする。
カレー作るとうれしそうな顔するんだ。めんどくさいって言っても、結局折れるのはユースタス屋の喜ぶ顔が見たいから。
「ユースタス屋も手伝ってくれるんなら、作る」
ほら、そのうれしそうな顔。しょうがねぇなあ。
大学から帰って来ると、ユースタス屋が待ち構えていた。
今日はランチタイムだけの出勤だったから、買い物を命じておいたんだけど、ちゃんと買ってきたらしい。
「じゃ、ユースタス屋は玉ねぎ係りで。俺は鶏肉ぶつ切りにするから」
「ぶつ切り……」
「肉でかい方が好きだろ」
玉ねぎは30分も炒めるらしい。ユースタス屋に玉ねぎを押し付けて、俺は鶏肉に包丁を入れた。適当に切って焼き目をつけて取り出す。
俺が調味料を量ったりしてる横で、ユースタス屋が玉ねぎを刻んで炒めてる。何にも言わなくてもちゃんと薄切りにしてたし、今だってちゃんと弱火で炒めてる。
ていうかさっき見た手つきと言い。前から思ってたけど、やっぱりもしかして。
「ユースタス屋、料理出来ねぇって嘘だろ」
「……なんで?」
「だって、料理に慣れてねぇヤツがそんなさっさとたまねぎ切れるわけないだろ」
うん、なんていうか、料理ができないんじゃなくて、できるけどしないって言うか。
一緒に暮らし始めたときに、俺は料理できないからお前が作ってくれると助かるって。
そう言われてうれしかったから、今まではずっと俺が料理してきた。そんなたいそうなことじゃないけど。
でもなんとなく思ってた。ユースタス屋って、ほんとは料理できるんじゃないかって。
黙ってユースタス屋を見つめると、ため息が一つ。少し気まずそうに頭をかいて、ユースタス屋が手元のフライパンに目線を落とした。
「まあ、できなくはねえよ」
「やっぱりな。ていうか、別に隠すことじゃないと思うけど」
「や、隠してたって言うか…、なんて言うか…」
「俺に料理させた方が楽でよかった?」
わざとちょっと意地悪なことを聞いてみる。ユースタス屋がそんな風に思ってないのは分かってるけど。
「そうじゃねえよ。お前が……」
「俺?」
「お前が、ここでなんか役割があったほうがいいのかと思って」
「は」
「お前言ってただろ。俺の世話にばっかなってるのは不公平だって」
ああ、そういえば言ったかもしれない。俺がここで一緒に住むようになったとき、家賃も何もかも心配しなくていいからってユースタス屋が言ったんだ。
でも、俺はそれじゃあダメだと思って。ただでさえ俺はまだ学生で、ユースタス屋より年下で甘やかされてるってのに。
与えてもらうばっかりじゃ、すぐにダメになってしまうと思ったから。だから、ユースタス屋に朝ごはんを作ってやって、それをよろこんでくれたのがうれしくて。
それでだ。そのときに、俺にごはん作ってくれって、ユースタス屋が言ったんだ。
「……変な気ぃ回さなくてもよかったんだよ」
「うっせえ。お前がなんか妙にいろいろ気にしてたみたいだったからっ…」
「俺、たまにはお前の作ったごはん食いたいなー」
「……別に、そんなたいそうなもんはできねえぞ」
「いいよ。普通のごはんが食べたい」
コンロに向かってるユースタス屋の背中にぎゅうと抱きつく。玉ねぎ係にしてやってよかった。今なら顔を見られなくてすむ。
玉ねぎが飴色になるには時間がかかるから、もう少しこうしてようと思った。
ありがとうの代わりに。
キッチン・ランデヴー
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ロートの世藻さまへ、相互記念で送らせていただきました^^
「一緒に料理する二人」とのことでしたので、珍しくユースタス屋がキッチンに立っておりますwww
キッドが料理できない件については、いや、できるやろ!って書いた本人が思ってたこともあり、わざと料理しない設定にしてました(裏話)
一緒に暮らしだすに当たって、ちゃんとローさんの居場所を作ってあげるために、料理できなくないけどできないって言ってたわけですね。
うん、分かりづらいけどそういうことですね(お前)
二人で作ったカレーはいつもよりおいしかったのはもうお約束で!
世藻さん、素敵なリクエストありがとうございました!これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
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