(あばさまへ、相互記念)
(学パロ)




一週間。それが俺に出された期限だった。


恋人ができた。それが二週間前。手はつないだ。抱きしめても怒られなかった。でもキスはまだ。いろいろと心の準備が必要だとか。
心の準備なんて、その場の雰囲気に乗っちまえばいいんじゃねえかと思ってたけど、どうやら俺に流れてる雰囲気と、あいつのはまた違うらしい。
別に公衆の面前でぶちかまそうってわけじゃねえのに。よく分からないけど、無理やりしたいわけじゃないから待つことにした。
大事にしたいから。あいつのこと。


一週間。それがキスまでの距離。遠いようで近い未来。


恋人ができた。それが二週間前。高校入学したときに一目惚れしたあの愛しい赤色。それが今は俺の近くにある。
今まではずっと友達だったのか、関係が変わったからか距離も変わったように感じる。今までよりももっと近くに。
もっと触れたい、近くにいたい。ひとつに、なりたい。
そんな想いばかりがあふれてあふれて、でも本人を目の前にすると駄目なんだ。抱きしめられるのが今の精一杯。
だから口づけはもう少し待ってほしい。




月曜日、火曜日、水曜日。約束したのは先週の金曜だから、後二日。もうすぐに見えて結構長い。




そうしてやってきた金曜日。これでやっと一週間経ったわけだけど、本当にしていいもんだろうか。
ていうか、キスしていいかなんて聞くのはどうかと思うし、かといって待ってたって向こうからしてくる…なんてことはなさそうだし。
昼休み屋上で一緒に弁当を食べながらずっと考えてた。俺にしたら雰囲気はなんとなく出来上がってるもんで、そんな意識して作ったことない。
でも、こいつが心の準備とか言いやがるもんだから、もうちょっと考えたほうがいいのか、とか。とかとか。
悩んでるうちにもう弁当箱はからっぽで、隣に座ってるトラファルガーは暢気にポカリなんか飲んでやがる。約束なんて覚えてないみたいで。
ああ、俺がこんなに悩んでやってんのにって思ったらなんだか苛々して、ペットボトルを強引にもぎ取ってそのままトラファルガーに口付けた。
驚いたように見開かれる目を片手で覆って、薄い唇に舌を這わす。息継ぎのために少し開けられた隙間から侵入して、奥に潜む舌を絡めとる。
怯えたように引っ込めようとするそれに吸い付いて離さない。ぐいぐいと身体ごとトラファルガーに密着して俺の全部で貪った。
一週間経ってんだから、いいよな?


ほんとに金曜日はすぐにやってきて。実を言えば朝からどきどきしてた。
一週間て言ったけど、ユースタス屋は覚えてるんだろうかって。今日、するのかな。
正直なところ、してほしい。けど、俺からしてほしいなんて言うのは無理。別に、今日しなくちゃいけないわけじゃない。
いけないわけじゃないけど……。
そんなことを考えてたら、もう昼休みの半分が終わってた。ユースタス屋はいつもと変わらない様子で弁当を平らげてぼうっとしてる。
いつもなら沈黙が続いても何てことないのに、今日は駄目だ。隣を意識しすぎてる。
いろいろ考えてたら喉が渇いてきて、ポカリを一口。そうしたら、いきなりユースタス屋の顔が目の前にあって。
あっと言う間にキスされてた。
触れるだけなんて生易しいもんじゃなくて、噛み千切られそうなキス。俺の目を覆った手は少ししっとりしていて、手が離れた後薄目を開けて見たユースタス屋の顔は、すごく真剣だった。
瞼がぎゅっと閉じられて、夢中になってる。少し紅潮した頬がかわいらしい。
でもどんどん余裕がなくなってくる。ぎゅうっと壁に押し付けられるように抱きしめられて、ユースタス屋がどんどん迫ってきて。
ちゅくちゅくと時折響く音がやけに大きく聞こえて、耳を塞いでしまいたくなる。もう離れたいのに、終わってほしくない。


「…っふ、あ……、は…」
「は……、ん…。……顔、すっげえ赤い」
「……お前だって」
「そんなことねえよ…。……な、どう、だった?」
「え?」
「や、なんか、ちょっと…。無理やりだったか、なーって…」


トラファルガーの目がちょっと潤んでるのが見えて、目を逸らした。
抱きしめていた腕の力を緩めて、少し距離をとる。でも、まだ近い。離れたくない。


ユースタス屋の赤い瞳が伏せられた。俺のこと捕まえてた腕が解けて、俺たちの間に空間ができる。
まだ離れたくないなあ。そう思って、今度は俺から距離を縮めた。


「きもちよかった」
「は」
「なんか、思ってたよりやわらかく、て、あったかかった。あと、お前からいいニオイした」
「……そうか」
「ユースタス屋、顔真っ赤だぞ」
「うるせえ…!」


心の準備がとか言ってやがったくせに、なんだこいつ。俺の悩んだ時間を返せ。
なかなか笑い止まないトラファルガーを横に倒して上に乗っかる。もう一回、今度は触れるだけのキス。
耳元で、唇以外も欲しいって囁いてやると、トラファルガーの顔も真っ赤になった。


Honey xx


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50/50のあばさまに、相互記念として贈らせていただきました!
「学パロキドロで初キス(恥ずかしがるローさん)」でした!
非常に遅くなってしまってほんと申し訳なかったです><
恥ずかしがるローさんということで、これはもうピュアにしてやるしかないな!^^^^と思って…こんな感じになりました^^;
あれ、あんまり恥ずかしがってない?←
今回は二人の気持ちを交互に書いてみました。お互いに誰かと付き合うのは初めてじゃないんだけど、なんだか緊張するっていう二人の感じが出せてればいいな!←
あばさまのみお持ち帰り可です^^もちろん返品交換も24時間体勢で受け付けておりますので!!
ありがとうございました!今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m



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