(10000hitリクエスト!森コさまへ)
(学パロで先輩後輩なキドロ)
(先輩ローさんと後輩キッドくんです)
学校の図書館は古い洋館だ。新校舎の裏手にあるその建物は、俺のお気に入りの場所。
夏休みになってから、毎日ここに通っている。勉強がはかどるのと、この場所が好きなのと、それからもう一つ。
待ち合わせをしている。
俺の恋人が来るのは週に3回。月曜と水曜と金曜に図書館に現れる。
宿題を教えてやるためってのもあるけど、夏休みでも会えるように。一年のヤツと違って、3年の俺はもう受験に向けての勉強が山積みで。
今更慌てるようなことはないけれど、勉強にほとんどの時間を取られるのも事実で、そんな中で考えたのがこの図書館デート。
夏休みに入ってから週に3回、学校の音楽室を借りてバンドの練習をするアイツに会う。
練習は昼かららしいから、それまでの時間。
ほら、やってきた。
白塗りの扉を開けて、赤い髪が軽快に入って来る。と言っても、俺のところにまっすぐ来ずに、反対側の窓辺に座って持ってきたものを広げ始めた。
時刻は9時ちょうど。俺たちの約束は10時からで、それまではお互いにやるべきことをやることにしている。
早く来てたってそれは同じ。変なルールだけど、俺が決めた。
自分の時間も、大切にしてほしいから。
勉強の時だけかける眼鏡を取り出して、数式に目を走らせる。問題を解いていると、時間はすぐに流れて。
ふと目を上げると、時計の針が9時55分をさしていた。アイツのほうを見れば、じっとこちらを見ていて、もういいだろと言いたげな視線。
苦笑しながら立ち上がって、ゆっくりアイツの傍まで歩いていく。
うれしそうな笑顔が俺を待っていた。
「おはよ、ロー」
「おはよう、ユースタス屋。英語ちゃんと持ってきたか?」
「おう、言われてた20ページまではやった。でも、こっちの英訳が全然分かんねえ」
机の上のテキストを見ながら説明を始めると、椅子を引いて近寄ってきた。真剣な表情がかわいくて、つい教える方も熱が入る。
10時から12時まで、小さな夏期講習が続いた。
「明後日は数学持って来るんだっけ?」
「ん、そうそう。ちゃんと言ったとこまではして来いよ」
「分かってるって。俺いつもちゃんとやってんだろ?」
家でやってくる分のページに赤丸をつけてやって、机の上を片付ける。13時まではなにをするわけでもなく二人で過ごす。
俺の勉強の話、ヤツのバンドの話、昨日見たテレビの話、好きな音楽の話、今度遊びに行こうって話。
他愛もない話をしていると、ヤツの手がそっと伸びてきて、机の下で手をつなぐ。
ライブのときにキーボードの上を滑る案外きれいな指が、俺の指に絡みついて。時折握り替えたり、指をくすぐられたり。
でもその手も13時になるとするりと解ける。
我が侭は言われないけど、目がもっと一緒にいたいって言っている。
それは俺も同じなんだけど。
でも、欲張ったらだめだ。お前に溺れてしまう。そんなのは苦しいだろ?
図書館を出て新校舎の方へ二人で歩いていく。校舎の壁の蔦を風が揺らして。
そっと分厚い蔦の陰へ手を引かれて紛れ込む。
俺が眼鏡を外したら、唇が重なり合った。好きだよって伝わってくるようなキス。
制服にしわがよるけどかまわない。俺の指も、ヤツの胸元にしわを作って。もう片方の手で赤い髪を撫でた。
唇が離れたら、それはもうおしまいの合図。吐息がかかるほど近くで。
「また、あさってな」
するりと蔦の間から抜け出したヤツの背中を見送る。俺の大好きな赤が、振り返らずに走っていく。
後姿が見えなくなったら、俺も予備校へ向かうとしよう。
夏の約束
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10000hitリクエストしてくれた森コさんへ!
「学パロで先輩後輩なキドロ」でした!
無邪気な後輩キッドくんと受験生なローさんです^^
ほんとは先輩後輩って言ったら運動部だよね!って思ったんですが…。
私運動部にいたことないので……全然分からんわ!←
たぶん、この二人、出会いも図書館ですね。キッドくんが一目惚れしたとかそういう感じだと思います(適当か)
素敵なリクエストありがとうございました!
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