(雪壬さまへ、相互記念!)
ただいまって言うと、おかえりって言ってくれる誰かがいる。
俺の人生の中ではここ最近そういうことはなかったから、それがすごく新鮮だ。
ユースタス屋のこと、直感だけで好きになって引っ張りこんじまったけど、一緒にいればいるほどもっと好きになる。
ただいまって言ったらおかえりって言ってくれるからだなんて。
たった一言なのに大したもんだよな。でも、せっかくだから、その続きも期待したっていいと思う。
「なあ、ハニー。一緒に風呂入ろうぜ」
「聞かなかったことにしてやる」
「だってよ、そろそろ『おかえり』のあとに『お風呂にする?ご飯にする?それともお」
「それ以上言ったらてめえの晩飯はねえからな」
キャベツを刻みながらの一言。やばい。あんまり絡むと本当に晩飯抜きにされる。
この前玄関先で抱きしめ過ぎたら、本当に晩飯が出てこなかったもんな。でも、次の日の弁当のおかずは一品多かった。
ダイニングテーブルに突っ伏して、ユースタス屋の背中を見つめる。
俺が買ってやった濃紺のエプロンに、今日はジーパンとTシャツ。ああ、今日も、か。
もうちょっと着るモンに気をつかやいいのに、もったいない。でも、ユースタス屋がモテても困るしな。
Tシャツ越しに背中がすらりと伸びてるのが分かる。その背中がみてみたい。いきなり三択は無しでも、せめて飯か風呂の二択にしてくれてもいいんじゃないか。
妙なことはしないと誓うから。……たぶん。
「……おふろー」
「入りてえなら先に入れるか?」
「ちげーよ、俺はユースタス屋と入りたいの!」
「……あんな狭い風呂に男が二人も入れるかよ」
「狭くなかったら入ってくれるんだ!?」
「んなわけねえだろ、馬鹿。リフォーム業者に電話すんな」
携帯に手を伸ばそうとした俺の手を、ユースタス屋の手が押さえる。代わりに目の前には晩飯の乗った皿。今日はコロッケか。
俺に言わせりゃでかいそれを、黙って食う。おいしい。俺、確実に餌付けされてるよな。この飯無かったらって思ったらなんでも言うこときいちまいそう。
「そんなに風呂に入りてえのか」
「うん」
「……じゃ、入るか」
「え!!!!!!」
「先週無事にシングルも出たことだしな。裸のつきあいくらいならいいだろ」
たまには俯いてみるもんだ。
洗い物を済ませたあと、一旦下の部屋に戻ったユースタス屋が、手に紙袋をぶら下げて戻ってきた。言われるままに外へ出る。
エレベーターで一階に下りて、マンションの外へ。ためらいなく歩いていくユースタス屋の後を追った。
どういうことだろう。まさか入浴剤を買いに行くとか…んな訳ねえよな。
こっち、といわれて、ユースタス屋の背中が、住宅街の路地裏に入った。まさか。
「……なあ、どこのラブホ連れてってくれんの?」
「はぁ!?なに寝言ほざいてやがる!」
的確な右ストレート。痛い。思わずうずくまる俺に、銭湯だよと、上から呆れかえった声が降ってきた。
「銭湯?」
「そ。銭湯なら二人で入ろうが十人で入ろうが、問題ねえだろ」
ほら行くぞ、と言ってユースタス屋が俺の腕をつかむ。
いや、銭湯って…確かに広いけど……。広いけど…なんか違わねえか!?
言いたいことはたくさんあれど、ここで文句を言ったら確実に帰るって言われそうで、そのまま歩き出す。
手を繋いだまま歩いていく。
心なしか、ユースタス屋の歩調が速い。銭湯のインパクトで気付かなかったけど、なんかこれって、デートしてるみたいだ。二人っきりで手をつないで。
俄然俺の気分が上昇する。
路地裏から出たところで、離されそうになった手を、今度は俺から繋ぎなおす。
「…………」
「誰も見てねえって」
「……」
「俺、すぐ迷子になるから、さ」
繋いだ手に力を込めて。
隣に並ぶと顔を逸らされたけど、手は離れなかった。
銭湯まで、早く行きたいけれど、まだ着かなくてもいい。
早足のユースタス屋を引き止めるように、わざとゆっくり歩いた。
図らずもデート
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「plus Caffe latte」の雪壬さまへ、相互記念で送らせていただきました!
二人のデート話が読みたい!と言っていただけたのはいいんですけど、このローさん真昼間に堂々とデートできんの?(芸能人的な意味で)という壁にぶつかり^^;
変化球もいいとこなデートになってしまいました(お前)
ていうか、デートですかこれ(聞くな)
素敵なリクエストだったのに、何かもう生かしきれてない感満載で申し訳ない!!
雪ちゃんのとこの二人みたいに、もっとらぶらぶすればいいのに←
リクエストありがとうございました!これからも仲良くしてやってくださいm(_ _)m
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