Reserve
リクエスト:速壊より
:モブ敵失礼ます。


岩場と砂ばかりの開けた場所に陣を置くようにしてDWNのロボットたちが集まっていた。周囲を輸送車などで囲み、厳ついロボットたちが厳重な警備にあたっている。
そのほぼ中心部には作戦本部があり、粉塵を避けるようにコンテナなどがつまれていて、空からも見えないように天幕も張られていた。

「今回は総力戦みたいなもんだ。手加減せずにとにかくぶちかましてけ」
「分り易いな」

天幕の下には機材が運び込まれて今回の出撃メンバーであるフラッシュ、クラッシュ、クイックが居た。他にメタルやグラビティも参戦していたが、各々部下ロボットたちの調整に今も陣内を歩き回っている。

「どっちがより多く撃破できるか久しぶりに勝負でもするか!」
「そうだな」

楽しみで仕方ないというように笑ってクイックはクラッシュ見る。するとクラッシュも満面の笑顔とまではいかないものの、珍しく楽しみにしてるのが見て取れた。声も何処かしらトーンが高く感じられる。

「そりゃ頼もしいが、余り突っ込みすぎるなよ?」
「誰に向かって言ってんだ?ハゲ」

機材を整えながらも耳を傾けていたフラッシュが呆れたように言えば、決まっていたかのようにクイックが反応して振り返る。するとフラッシュも負けずに振り向いて軽く睨みつけた。

「先走りすぎて自滅が得意なデコバナナにだが文句アリマスカ?」
「上等だハゲ!撃破数の初めのカウントにしてやってもいいんだぞ!」

一触即発な流れにフラッシュの助手をしていた部下たちも慌ててその場から退避する。そして、2機が睨みをきかせる中、ゴンッという鈍い音ともに作戦本部が静まり返った。2機が屈みこんで痛みに耐える中、両手を不自然に上げて平然と2機を眺めていたのは大人しくしていたクラッシュだ。

「んな事より用意してさっさと行くぞ」

2機の口喧嘩になど眼中になしとばかりに宣言するクラッシュに屈みこんで痛みに耐えていたフラッシュが初めに顔を上げて睨みつける。

「クラッシュ!お前今日は重装備なんだから単純に叩くのも禁止っつったろ!」
「悪い、忘れてた」

指摘通りクラッシュはいつになく手足がしっかりしたものに切り替わっている。弾薬数もさることながら馬力も格段に違う重装備で、今回のような正面からの総力戦などに良く使う装備になっていた。言わずもながら移動速度は更に低下していたりする。

「アハハ!もやしハゲめ!」
「うっせ黙れデコバナナ!テメェこそ地味に痛そうにしてんのがバレバレなんだよ!」

同じく屈みこんでいたクイックが笑っているが、その涙目が笑いからなのか痛みなのかは定かではない。フラッシュが文句を言いながら軽く蹴るのを皮切りにまた小競り合いのようなやり取りが始まっていた。

「相変わらず騒がしいな。今回は気を引き締めろよ」

そこへ騒ぎを聞きつけてかメタルが顔を出して騒いでいた2機は立ち上がりお互いから顔を背けた。クラッシュはその様子に呆れながらもメタルがいる方向へ向き直る。

「メタルも前線か?」
「コラ!メタルは一軍率いて別働隊だって知らせただろ!」

首を傾げて確認するクラッシュにメタルは残念そうな顔をした。そして、後ろからフラッシュが呆れた口調で注意するように言えば、今更思い出したのかクラッシュの表情が変わる。

「お前たちの戦う可愛い姿が見れなくて残念だ」

そこで不意打ちに「可愛い」を強調したメタルの言葉にその場に居た3機は揃ってドン引きな反応を見せていた。

「微妙にオフの発言混ぜんなキメェ!」
「本当に気持ち悪ィな!」
「メタルきもい」
「そんな弟達が愛おしいッ」

フラッシュ、クイック、クラッシュの順にそれぞれ拒絶の言葉を投げつけた。するとメタルは顔を上げて両手の平でそれを覆い、声高々に叫ぶ。そんな感じだから尚更ドン引きしていた。そして、次はどうすれば最善かとフラッシュあたりが考え始めた時、助け舟の如く部下を率いたグラビティーがやってきた。

「メタル君、ちょっといい〜?」
「なんだ?もう時間も無いんだ、手短に済ませろ」

身内以外がいる場所では崩れることがないので3機は呆れつつも安心してメタルを見送る。今回の別働隊での話しが続くらしく、メタルとグラビティーの気配も段々と本部から遠ざかっていった。

「まぁ頑張ろうぜ。そろそろマジで時間だ」
「そうだな。クラッシュ、ヘマすんなよ?」
「俺は平気だ」

本部での騒ぎも落ち着いたと見るや退避していたフラッシュの助手をしていた部下ロボットたちも帰ってきていた。そして、そろそろ作戦開始時刻が迫り、本部からクイックとクラッシュが移動する。けれど本部から出ないうちにクラッシュが立ち止まった。

「どうした?」

立ち止まって俯いたまま無言のクラッシュにクイックがいち早く反応して駆け寄る。そのやり取りを聞いてか、フラッシュも振り向いて耳を傾けていた。

「重装備、久しぶりだからか少し動き辛い」
「気をつけろよ?いくら高火力出せるっても動けないと意味ないだろ」
「うーん・・、すぐ慣れる」

そう言いながら歩き出すも明らかに重そうにしていた。それでも久しぶりだったためクイックは苦笑しながらゆっくりとクラッシュの後をついていく。

「何かあったらちゃんと言えよ?」
「まず俺に報告しろ。それが手っ取り早い」
「わかってる」

2機に心配されるように言われて少しだけ不機嫌になったクラッシュが無愛想に返事をした。



戦場は岩場は厄介で何が影に潜んでいるかわからないが、砂で足を取られることもなく先頭に専念できる。そして、一度砂の上で戦うことになると砂塵に悩まされ、砂に足も取られて元々遅い反応速度が更に遅くなっていた。
前線を戦うクラッシュは今まさに砂の上。それでも被弾は最低限に済ませて特別損傷もない。けれど動きは初めより確実に落ちていた。

『クラッシュ?お前大丈夫か?』
「なんだか体が重い」

周囲のロボットを回転していないドリルでなぎ払いながら戦い、繰り出される攻撃もドリルアームで防いで機体はほぼ無傷だった。偶にくるボム等の攻撃にも平然と立っていられる。なのにクラッシュの表情は優れず、それは通信相手のフラッシュも理解しているのか先ほどからしつこいぐらいに何度も聞き返していた。

『あ?オイ!そのエネルギー残量どういうことだ?』
「知るか。通常通りのはずなのに機体が重い」

そこでまさかとフラッシュが機体データを読み取って調べたらしく、焦った声で通信が返ってくる。それはクラッシュが一番わかっていた事で今更だった。随分前に自覚してから原因を探ってもわからず今に至る。

『くそ、機体チェックもパーツチェックも問題無ェのに・・』
「今から戻っても力尽きそうだ。なんとかなるか?」

その言葉にフラッシュの声が途切れた。クラッシュは黙って返答を持ちながら、振り切るように周りの敵機を処理していく。そして、粗方終わったところで岩場の物陰がある場所に移動し始めた。

『よく聞け。今からクイックを向かわせる。メタルとグラビティにも一部小隊を回してもらう。とにかく今は戦場のど真ん中で力尽きないよう心がけろ』
「わかってる」

砂場から岩場へと移って一息つくように立ち止まってから、また歩き始める。そして、岩場の影になった場所を探して歩きまわり、視界の端で遠くから近づく小隊を見つけた。クラッシュは黙ってそれを眺める。

『マジで大人しくしてろよ?絶対だぞ!いいな!?』
「早めに頼む。エネルギーばかりはどうにもならない」

目線の先には岩場をわかっているかのように目指す敵機たち。クラッシュは小さくフラッシュにわからない程度に溜息をした。そして、視線を下げて両手を眺める。砂塵などで砂っぽくなつているが、大きな傷もない。

『ちゃんと待ってろよ!聞いてんのか!』
「わかってる。大丈夫だ」

喧しいぐらいにフラッシュが怒鳴っているのはそれだけ焦っている事がわかる。クラッシユ自身も出来る限りを考えても焦っても仕方ない状況に溜息しか出てこない。

「機体チェック異常ナシ、パーツも電気系統も異常ない・・」

何度目かの機体チェックをしても何処も異常がない。ある程度戦闘を繰り広げたのに損傷箇所もないのだから、エネルギー残量が悔やまれる。そして、再度クラッシュは敵機の様子を眺めた。

「残量があと少し。アレを乗り切るには足らないな・・・」

誰に言うわけでもなく呟いた。


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