続**  




嫌いだった。両親も、祖父母も、承太郎も、クラスの人たちも
全員が、私を見てくれない。皆が承太郎を見る
といっても身内は承太郎と私を平等に見ていると思う。
でも、私はそう感じられないのだ
何をしても、承太郎と比べられているように感じる。
どうやっても、承太郎を優先しているように感じてしまうのだ
学校について、下駄箱に承太郎はラブレター、私は不幸の手紙
教室に行けば、承太郎は皆から挨拶をもらう、私は空気。教室の隅で息を殺して過ごすだけのただの置物となってしまう

下校中、承太郎は周りの取り巻きを追っ払って
私と手を繋いで帰る。これが、女の子たちの嫉妬の種になっているとも知らずに

承太郎と手を繋ぐのが嫌だった、指に絡みついてきて
恋人がするような手の繋ぎ方だったから。

彼と一緒に帰るのが嫌だった。たった一人の友達と帰れないから
その友達と帰ろうとすると、彼はとても怒るから・・・。

承太郎とご飯を食べるのが嫌だった。
私が口に物を運ぶたび、とても変な視線を送られるし
彼が私の口に物を運ぶと、不気味な笑顔になるから。

承太郎と一緒にお風呂に入るのが嫌だった
もうそんな歳でもないのに彼は私と入浴を共にする。
お風呂が大きいから大丈夫。承太郎も、両親でさえそう言う。
そういう問題じゃないのに

承太郎と、一緒に寝るのが嫌だった
寝ているとき、太ももの間に足を入れられるし
抱きしめられて苦しいし。少し息が荒いし・・・
服と服が擦れる音がとても煩わしい。

「なぁ。久々にシよう」
承太郎にこう言われてしまえば私に拒否権なんかない。
こう言われてしまえば、私は黙って服を脱いで足を開く
彼は他の人には見せないような歪んだ笑顔で腰を打ち付けてくる。
こんなことしだしたのはいつだったか
ずいぶん前のことだった。私は無知だからこの行為の意味をしらなかった。
大人になって、意味がわかってきたときひどい罪悪感に苛まれた

「お願いしますから、もうこんなことやめよう。
こんなの、おかしい。私たち家族なのに・・・」
何度この言葉を言っただろうか、
何度いっても承太郎は聞く耳をもたない。
事が済めば何事もなかったかのように母親の前で平然としている姿に吐き気がした

昼。承太郎に見つからないように教室を抜け出してふと、窓越しに空を見た。
空が綺麗で、綺麗で。何もかもやめたくて私は階段を駆け上る
運動なんかあんまりしないから息が切れて苦しい。
屋上には誰もいない。立ち入り禁止だったから
だけど私はその立ち入り禁止と書いてあるドアのドアノブが壊れているのを知っている
いつもこっそりこの屋上でごはんを食べていたから。
私はそのまま屋上に向かって真っ直ぐ走る、その勢いでフェンスを登ってみれば私みたいに丁度上を見上げていた人が指をさしながら悲鳴をあげ、それに気づいた人々が次々と私を見上げる。
見知らぬ人から苦手だった教師。私をいじめていた人たち、それに自体に気づいた承太郎までも、私を見ている
目を見開いて血走っていて、いつも冷静な承太郎がこんな顔をしている事が愉快でたまらない。

今この瞬間。皆が私を見てくれている
承太郎なんか眼中にもなく私だけを見ている。

私は清々しい気分で、空を見ながら大の字で体を倒した
人間が飛び降りるとき、周りからみればほんの一瞬の出来事だが本人はそれがスローモーションに感じるという。私も例外ではなく時がゆっくりと、むしろ止まったようにも感じた。そのとき、私がいたのは空中でもなく地面でもなく

承太郎の腕の中だった。
承太郎の目は相変わらず血走っていて、私の腕を強く握る

「よぉ。楽しかったか、俺を焦らすのは。残念だったな」

私はどうやら、死ぬことさえ許してくれないらしい
この菩薩がいる限り、私は。羅刹五体満足で余生を過ごすのだろう。







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