27  




目覚めると。知らない場所にいた
暗い。とにかく暗い
視線だけ泳がせる。どうやらベットの上にいるらしい
上は天井、左はドレッサーやらなにやら、右には…机にふんぞり返って足を乗せ、本を読んでいる人物がいる。直感的に、それが誰かわかった。

「DIO…。」
「…起きたか、ご機嫌よう。いい夜だな」
青白い陶器のような肌、口の端から見える牙
堀の深い顔立ち、綺麗なブロンドの髪に赤い瞳。
懐かしいような、久しぶりに会った親戚のような…
そんな感情が名前の中を暴れまわる。
とりあえずDIOから距離をとろうとするが、手には手錠、足には足枷がついていた。

「いい趣味だな。DIOさんよぉ」
「波紋なんぞという忌々しいものを使われては面倒だからな。」
確かにこれではDIOに手出しはできないだろう
肘や膝の関節は動かせるがこんなハンデがあれば当然名前はコテンパンだ。

「…ほう。本当に瞳が赤いのか」
本を読むのをやめ、冷たい手を名前の頬に滑らせ次に名前の耳を触る。
少しこそばゆくて、身じろぐがDIOは手を離すつもりはないらしい
ふにふにと少し強く押したり、ひっぱったり

「なんなんだ。」
「ほくろはないんだな」
「…だからなんだ。」
「いや、なんでもない」
なんなんだ、なぜすぐさま殺さない。なぜそんな優しい手つきで触ってくるのだ
なぜ、これほどまでにこの手が心から欲しいと思ってしまっているのだろう。

「心配するな、殺しはしない。」
食事の用意がある、と綺麗なテーブルには冷めた食事が置いてある。
DIOに担がれ、椅子に座らされる。

「……。」
「そうだった、今手錠があるんだったな」
「ほら」と肉料理をフォークで刺し、
名前の口元へ運ぶ。

「ほら、さっさと食え。このDIOがここまでしているのだ。」
一口、ぱくっと肉を食べる。
冷めてはいたがとても美味しかった、こんなものは長年食べたことがない
両親がいたころはよく食べていた気がするが、もう味も忘れてしまった。
いつの間にか、食事は全て食べ終わっていた。

「・・・暖かいのが食べたい。」
「なるほど、そう言えば俺も人間だったころはそうだった。気を付けよう」
横暴で、勝手で、私利私欲で、独裁者で…
名前の知っているDIOはそういったものだ。
だが目の前のDIOは違かった、なんだか、暖かかった
夜は数年ぶりに、ふかふかのベットで眠った。
その間、傍にはずっとDIOがいた、名前が脱出しないようの監視なのかなんなのかはわからなかったが。とても優しい目をしていたのは確かだった



「私はお前の唯一の理解者だ。」
不意に、DIOが言った。
どういう意味かは分からなかった

「お前の生い立ちは、とても私によく似ている」
何故、自分の生い立ちを知っているのか、手下のスタンド遣いだろうか。
DIOのスタンドだろうか。ただの出まかせだろうか

「出まかせではないぞ。」
「……。」
嘘ではない。名前は何故かDIOを信じずにはいられない
何より嘘を付く理由もないし、こんなくだらない嘘をつく奴ではないことを知っているからだ。

「お前は私によく似ている。
…いや。お前の方が酷いかな」
その目は確かに優しかった。
包容力というのだろうか、カリスマというのだろうか
悔しくも名前は。承太郎と花京院が初めて名前の瞳を見た時と同じ感覚に酔っていた。
何でも話してみたくなった、過去を共有してみたくなってしまった。

「…私、は・・・生きる為に泥水をすすった」
「あぁ。」
「・・・堅いパンを盗んだ。一週間かけて、それを食べるんだ
カビも生えてて、美味しくもなんともないのに」
「あぁ。」
「幸せな奴が嫌いだった。理不尽じゃあないか
私はこんなに苦しいのに、辛いのに。
なんであいつらはあんなに楽しそうなんだろう」
「…あぁ。」
嫌だな、なんで次々と昔のことを思い出すのだろう。
ドクドクと心臓が脈打つ、身体が熱い。息が苦しくなって方で呼吸をする
頭が痛い、脳味噌を鈍器で殴られているような痛みだ。

「…痛い。」
痛い痛い痛い痛い…。
その場に蹲る、そんなことしても痛みは和らがない
頭を抑えるとさらりと髪が降りてくる。DIOが髪ゴムを爪で切断したようだ。

「なんだこれ…。」
ブロンドの髪。
自分の髪がブロンドになっていた、
ありえない、おかしい。普通じゃない
刺されたような衝撃が心を襲う。
DIOは愉快でたまらないという表情で名前の髪をすくい、そこに口づけをする。

「美しいぞ。漆黒より、そのほうがいい」
DIOの赤い瞳に映る自分の赤い瞳、目の前の彼と同じブロンドの髪。

「あまりにこのDIOとお前は似ている」
このブロンドの髪も、赤い瞳も
あまりに名前とDIOは似ていた。
ぐつぐつと煮えるような頭、
震える身体を必死に名前は自分で抱きしめる。

「安心しろ、何も怖いことはないんだ。
ここにお前を傷つけるものは何もない」
DIOに抱きしめられた瞬間、名前は意識を手放した。


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