「おいナマエ!こんなとこで何してんだ!風邪ひくだろ!」
「ん…あれ…土方さん?」
「縁側なんかで寝るんじゃねェよ。風邪でも引いたらどうする」
「いつの間に寝ちゃってたんだろう…」
「今夜はまた冷え込むらしいからな、気をつけろ」
土方さんは自分の羽織を私に着せるとすぐに去って行った。鬼の副長と呼ばれる土方さんがずいぶんと優しくて、なんだか可笑しくて少しだけ笑みがこぼれた。
「おーい、ナマエ」
「あ、左之」
「お前こんなところに居たのか。ん?それは土方さんの羽織か?」
「縁側で寝ちゃってて…風邪ひくからって貸してくれたの」
「はは、確かに今のお前に風邪をひかれちゃたまんねェな」
「みんな過保護すぎる気がする」
「そういうなって、お前一人の体じゃねェんだ」
…あれから一年と数カ月。また月経が来なくなった私は不安で不安で涙を流しながら町医者のもとまで行った。…すると、腹に子が宿っていると言われたのだ。
屯所に泣きながら戻り、幹部のみんなに報告をすると自分のことのように喜んでくれた。 一番喜んでくれたのはなぜか新八さんだったのだけれど。
「そういえば、今日は医者に行く日じゃねェのか?」
「うん、左之は巡視があるでしょ?今日は一君が着いてきてくれるって」
「へぇ…斎藤が。随分と似合わない場所に行くんだな」
「私以上に緊張しているんでしょうね」
「そうだな」
私と左之の子、あなたは強く強く望まれてこの世に生を成したのです。屯所に居るたくさんの父様があなたを目一杯愛してくれるでしょう。だから…早く生まれておいで、
「楽しみだな、」
「うん」
私の腹の上で二人の手が重なる。これが父と母のぬくもりですよ、覚えておいてね。
(終)
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