17

「ねえ新八君、」
「どうしました?」
「今日って何かお仕事入ってるの?」
「いや、今日は…っていうか今週ずっとなんですけど」

ここにきて数週間。最近はずっとお仕事が入っていなかったのか銀ちゃんも、新八君も神楽ちゃんも私と一緒に居てくれた。

だが今日はどうだろう。銀ちゃんは早朝からバタバタと万事屋を出て行ってしまった。声をかけるのも躊躇われるくらい…厳しい顔だった。

仕事が入ったのかと思ったけど、新八君は違うというし…何かあったのかと思ったけど私には情報を得るすべもない。相変わらず無力な自分が嫌になる。

「気になることでもありますか?」
「うん…でも、大丈夫」

大丈夫、だよね。


――ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン!

「うわしつこいな…ちょっと出てきますね。」
「うん」
「なんかゴリラっぽい臭いがするアル」
「それどんな臭い!?」

神楽ちゃんが酢昆布をしゃぶりながら面倒くさそうな顔でそう言った瞬間、玄関から聞いたことのある声がした。

「名前ちゅあああああん!ちょっと聞いてよぉぉぉぉ!」

「ちょっと近藤さん!」

「マジでゴリラアル!」

「何ですか局長!あんた屯所を簡単に離れてどうするんですか!」

「だってだってさぁー!」

涙と鼻水で顔がグチャグチャになってる局長。ちょ…そんな顔で迫られても…!き、汚い!

「トシと総悟がさぁー!ずっと俺に隠してなんかやってたと思ったらさぁー!今朝なんかすっごい怖い顔しちゃって出て行っちゃってさぁー!何で俺だけ仲間はずれなの!?俺局長だよ!?」

神楽ちゃんは局長を不憫に思ったのか、「ほら、一枚くれてやるから落ち着くアル」と、酢昆布を一枚差し出している。…餌付けの絵だよねコレ。

なーんか…嫌な予感が確信に変わっていく。新八君も…何かを隠しているようだ。


[ prev / next ]

[戻る]