誕生日(カカシ2014)

明日はカカシの誕生日だ。最近任務続きで中々お休みがもらえないカカシも、明日だけはなんとか休暇をもらえるように上にお願いしてくれたみたいだから、久々に一緒に過ごすことになっている。

甘いものが好きではないカカシだから、ケーキは必要ないとしても…明日はカカシの好物を食卓に並べたい。そう思って冷蔵庫には旬の食材がたくさん入っている。特に出かける予定は無いが、二人でのんびり過ごせたらいいな。

「カカシ、明日で何歳?」
「んー?そうだねー…三十だよ。大台に乗っちゃう」
「もうそんな歳かあ。」
「早いね」

ソファに二人並んで他愛ない話をしていると窓のところに一つの気配。ああ、なんてことだ…これは任務の報せ。

「あちゃー」
「仕方、ないよね」
「しっかし…火影様も鬼だね。わざわざこの日だけ休みにしてってお願いしてんのに」

正直に言うと火影様が恨めしい。私が明日が来るのをどれだけ楽しみにしていたことか…。しかし忍である以上任務は絶対だ。何があっても。もしかしたら長期任務かも知れないし色任務かも知れないし…カカシの誕生日を祝えないのは確実だろう。

「名前すまない。とりえず確認だけしてくるよ。もしかしたら俺じゃなくても大丈夫なのかも知れないし」
「ううん、いいの!私なんかの約束より里の任務の方が大事だもの」
「私なんかの…って、それお前本気で言ってるの」

怒りのこもったカカシの眼……

「ご、ごめんカカシ!私用事思い出しちゃった!任務頑張ってね!じゃあ!」
「おい!名前!」

−−−バタン!

「はあ・・・」

カカシの目が怖くて、咄嗟に家を出てきてしまった。こんな夜中に用事ってなによ。私何をしてるんだろう。

フラフラとしばらくの間歩き続けて、通い慣れた公園にたどり着いた。ブランコに座って空を見上げる。ああ月が綺麗だ。カカシも見てるかな…そろそろ日付が変わっただろうか。

「カカシ…誕生日おめでとう」

空に向かって呟いたところで返事がくるわけでもなく虚しさが増しただけだった。

−−−ガバッ!

「キャ!!!!」
「ばか、大声出さないの。俺だよ」

突然背後から抱きしめられた。何事かと思って振り向くと任務に行ったはずのカカシがいた。なぜ…?

「待機所にいったらさ、アスマたちがいてね」
「うん」
「俺への招集が手違いだった」
「え?」
「ってことにしてくれた」

−−−−−−してくれた…?

「お前今日町で買い物してる途中に紅にあったでしょ」
「紅さん…うん、会った」
「俺の誕生日だからって俺の好物ばっかりカゴに入れてて、すごく健気で可愛らしかったんだって。二人で過ごさせてあげたいだとさ。あいつらの好意」
「そう、なんだ…」
「うれしくなーい?」
「嬉しい、」
「だったらもっと笑って」
「ん。カカシ、誕生日おめでとう」
「ありがとう。名前、俺にさ誕生日プレゼントくれない?」
「え?お家で料理・・・」
「じゃなくて、ここに名前書いて欲しいんだけど」
「婚姻届…」
「だめ?」
「よ、よろこんで!」

あまりの嬉しさに振り返ってカカシに抱きつくと、彼もまた、ぎゅっと抱きしめてくれた。

「愛してるよ、名前」
「うん」
「今夜は寝かせないから」
「え、」
「よろしく〜」

イタズラに笑うカカシ。うーん、こんなに楽しそうに笑うカカシは中々見られないから、今日のところは許してあげよう…。


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