「まだ出ねェか?」
「もうちょっとだと思うんだけどね。促すためにちょっと散歩してきます」
「俺ァ仕事があっていけないから誰か連れて行けよ」
「大丈夫ですよ」
「だめだ」
「はいはい。いつまで経っても心配性なんですから」
そういって散歩にでかけた名前。臨月に入っているのだ。2人目だからなのか余裕ぶっこいてやがるもんだから見てるこっちがヒヤヒヤする。
非番の総悟あたりに声をかけたらしく、遠くの方でいってきますと声が聞こえた。
「はあー・・・」
余裕そうな名前の前で俺が緊張している場合ではないと思ってひた隠していたが、実は極度に緊張している。一度経験しているといえど出産といえば一大イベントな筈である。なんであんなに余裕なんだ。予定日まではあと一週間弱ありはするのだが・・・そろそろ、なんというか、陣痛がきてもおかしくはない。
そんなことを考えているといつの間にか一時間ほど経っていた。
ピピピピ――――
「もしもし、総悟か?非番なのに悪いな、付き合わせちまってんだろ?」
「まあそれは良いんですがねィ、産気づいたみたいなんで病院連れてきやした」
「は!?!?」
「あー急にきたわーってすげェ微妙なテンションでいいやがるから焦りが来なくて逆に焦りやした」
「で!名前は!?」
「今分娩室でさァ」
「ちょ!すぐ行くから!」
「へーい」
いやいやいやいや…なんでだよ、何が起こってんだよ、急すぎるだろ、心の準備が…ああ!もう!なんなんだよ!とりあえず名前が数日前から準備してた入院セットを手に取り車を飛ばす。屯所を出る直前に会った近藤さんには産まれそうだから病院にいくと告げた。俺以上に驚いていたが近藤さんもすぐに病院に向かうらしい。
「総悟!名前は!?」
「まだかかりそうですぜィ?」
とりあえず間に合ったことに安堵のため息を吐く。上の子については不本意ながら少しの間万事屋に預けてある。産まれたらあいつらにも連絡してやらなきゃなんねェか…。
それから小一時間。ついに、生まれた。
「元気なお子さんですよ、」
取り上げてくれた助産婦さんに礼を言って名前にかけよる。よく頑張った…頑張ったなァ…ッ
「ありがとな、名前」
「十四郎さん、私からのプレゼント」
「ああ、最高だ」
「誕生日おめでとうございます」
「え?」
「十四郎さんのお誕生日です。それと、この子の。」
「あ」
「絶対にこの日に産もうと決めてたんです」
そういって笑う名前。
妊娠が発覚して予定日を告げられた時から密かに企んでいたらしい。女ってすげェな。
「名前、愛してるぜ」
生涯忘れられない誕生日になった。
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